2015年。グーグルがいよいよ、Google X発の新規事業を開始する。第一弾は気球を使う通信事業。ヘルスケア事業などが続く。グーグルの領域侵犯は、これからが本番だ。クラウド事業の成功が、その自信を支えている。
グーグルは2015年3月、「Project Loon」を数カ月内に開始する予定であることを明らかにした。無線基地局を搭載した気球を高度20キロメートルの成層圏に浮かばせ、これまでインターネットが使えなかった地域にインターネット接続サービスを提供する。
Project Loonは、「Moonshot(月面着陸)」級の困難が伴う技術開発に挑戦する部門と定義するGoogle Xが開発している。
気球は成層圏を3カ月以上も飛び続け、太陽光発電で作った電力で無線基地局として稼働する。一つの気球で半径40キロメートルのエリアをカバーできるため、地上に無線基地局を整備するのに比べて、大幅に少ない投資で無線通信網を整備できるのだという。
ペイジCEOは2014年3月に開催された「TED 2014」の講演で、Project Loonの狙いを「世界人口の3分の2を占めるインターネット接続を利用できない人々に、安価なインターネット接続を提供すること」と語る。
インターネット接続が無い地域には、グーグルのビジネスの基盤となるデータも存在しない。データを作るためのインフラを整備することで、グーグル流を世界中に広げられるようになる。
コンタクトレンズで健康管理
Google X発のヘルスケア技術も、近い時期の商用化が見込まれている。グーグルは2014年1月に、装着するだけで血糖値を計測できる「スマート・コンタクト・レンズ」をGoogle Xが開発していると発表した。無線チップとセンサーを搭載する医療用コンタクトレンズで、装着者の涙を分析することで1秒間に1回という頻度で血糖値を計測する。採血に比べて、患者の負担が小さい。
グーグルは2014年7月にスイスの製薬大手ノバルティスと提携し、ノバルティス傘下のスイス・アルコンがグーグルからライセンスを受けてスマート・コンタクト・レンズを製造すると発表した。Google Xを統括するブリン氏はノバルティスとの共同プレスリリースで、「最新技術を使うことで、数百万人もの人々の『生活の質(Quality of Life)』を向上できるようになる」と述べる。
グーグルは血糖値を計測して何をするのか。ヒントになるのが、グーグルが2014年7月に発表した「Baseline Study」というプロジェクトだ。人間の血液や尿、唾液、涙などからデータを収集・解析し、人間が健康であるための「基準値(ベースライン)」を見つけるとしている。ヘルスケア領域にもグーグル流を持ち込むというわけだ。
事業化が近づいているGoogle X発の技術はほかにもある。2017年までの実用化を目指す「自動運転車」が代表格だ。それ以外にもオンラインショッピングの商品を配送する無人の輸送用ドローン「Project Wind」や、2013年12月に買収した米ボストン・ダイナミクスの四本足で自律的に動くロボットなど、ハードの開発を進めている。
エネルギー分野にも布石を打つ。2013年5月には強い風が吹く高度140~310メートルの空中で風力発電を行うという「飛行型風力発電装置」を開発するスタートアップの米マカニパワー(Makani Power)を買収。GoogleXで開発を継続している。