「案件が増えるかどうかはやってみないと分かりませんが、とにかくこの展示会に出てみたいと思っているんです」

 都内のあるエンジニアリング会社で経営幹部と話していたときのことです。出展予定だという展示会のホームページを会議室のプロジェクターに映し出しながら、とても自信なさげに相談を持ちかけられたことを覚えています。

 この会社はリーマンショックで業績が悪化し「債務超過」に陥りました。その後、銀行の紹介で当社とのお付き合いが始まって3年ほどになります。従業員は90人ほどで、技術力や顧客対応力は非常に高く、既存顧客からは驚くほど高い信頼を得ていました。しかし、大口顧客からの売り上げが激減、設備の固定費がかさみ、業績が急落したのです。

 業績が悪化している会社というのは、どうしても全体的に雰囲気が暗く、自信のなさに満ちているものです。筆者はこの会社の営業会議に今でも毎月出席していますが、お付き合いが始まった当初はまさにお通夜のような雰囲気でした。

 展示会のホームページを見ると、確かにこの会社の新規顧客になりそうな来場者も多そうでした。そこで私は、「この展示会に出展するのはとても良いことだと思いますが、Aさんの考える今回の目的は何ですか?」と聞いてみました。

 すると、「いや・・・、どうなるかは分からないんですが、もしかしたら関係がつながるところが見つかるかもしれないので・・・」

 私はさらに、「なるほど。例えば、この展示会から3社の新規顧客を獲得するとか」と水を向けてみました。すると、

「いや、どうなるか分かりませんので・・・」

「でも出展するにも、当然コストがかかりますよね?」

「出展料やブース装飾費用など、3日間で合計200万円ほどかかりますが、半分は助成金が使えます・・・」

「100万円はかかるというわけですね。それだけ経費を使って出展するのであれば、何としても結果を出すために力を尽くすべきではないですか? とりあえずやってみて結果はこうでした、というのはマーケティングではありません」

「う~ん、そうですよね・・・。しかし・・・」

「Aさんが会社を良くしようと思って、このような企画を持ってきてくださったことは本当に素晴らしいと思います! でも、出展するために会社の経費を使うのであれば、何としても投資対効果を最大にするためのマーケティングプランを事前に設計した上で実行すべきです! もちろん、そのための考え方や具体的なノウハウはお伝えしていきます。一緒に準備を進めていきましょう!」

「・・・・・」

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