世の中には自分の「そっくりさん」が3人いる──。こんな通説の真偽は定かではないが、「顔」は個人を識別する極めて有効な“データ”だ。そこで最新の顔認証技術を、様々な業務に活用する企業が続々と現れている。ホテルのルームキーや小売店の会員カード代わりに、そして“ブラック顧客”の特定に威力を発揮する。画像を数値に置き換えて認識の効率を高め、情報が漏洩するリスクを低減する。

ハウステンボス
顔が鍵代わりの“変なホテル”

 「いらっしゃいませ。変なホテルへようこそ」。フロントの向こうからこう案内してくれるのは、20代の女性の姿をしたロボットだ。その隣では、恐竜の姿をした別のロボットが宿泊客を案内する──。

●ハウステンボスは、同規模のホテルに比べてコスト削減を徹底した安価なホテル経営の事業モデルとして「変なホテル」を開業した
●ハウステンボスは、同規模のホテルに比べてコスト削減を徹底した安価なホテル経営の事業モデルとして「変なホテル」を開業した
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 2015年7月に開業した、長崎県佐世保市ハウステンボス内の「変なホテル」。先進技術で「究極の生産性」を実現することをうたい、注目を集める。「テレビは置かずタブレットで番組視聴」「工場で資材を加工して現地での組み立て作業を3割削減」「放射冷暖房でエネルギーの年間使用量を3割削減」といったローコスト施策のなかで、一際目立つのがロボットの活用。スタッフ数を通常の3分の1に抑えた。

 だが、フロント業務をロボットに任せることで新たな課題が生じた。宿泊客がルームキーを紛失したときの対応だ。「どこで紛失したのか」「なぜ紛失したのか」など確認作業が煩雑なうえ、紛失したルームキーの無効化や新しいルームキーの発行などにも手間がかかる。

 ハウステンボスの澤田秀雄社長は、「現時点ではロボットは複雑な受け答えに対応できない。ならば、ロボットが対応できない業務は、最初から外そうと考えた」と話す。そこで着目したのが、顔認証をルームキー代わりにすること。「顔認証でキーレスにすれば、お客様も便利になるし、そもそも紛失することもなくなる」(澤田社長)。

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