「テレワーク制度をどのように全社導入すればいいのかという企業からの問い合わせが、毎月100件ほど寄せられている」。普及推進団体である日本テレワーク協会の今泉千明主席研究員はこう明かす。前年と比べて2割近く増えているという。
テレワーク制度自体は以前から多くの企業で導入されてきた。だが、ほとんどは育児や介護を抱える社員などに向けた特別な制度で、対象となる社員数は少なく規模も限定的だった。
しかし今、企業が導入しようとしているのは、生産性向上を狙った全社規模のテレワーク制度だ。多くの企業にとって未知の取り組みである。
そんななか、オフィスワークの生産性向上を目的にテレワーク制度を先行導入し、着実に運用している大手企業が登場している。対象となる社員は数千から数万人に上る。先行事例を取材すると導入を成功させる3つの秘訣も見えてきた。「ハードルを下げる」「迷わせない」「円滑なコミュニケーション」である。
【ハードルを下げる】
ポップで堂々宣言 申請は手軽に
最初の秘訣は「ハードルを下げる」ことだ。オフィスワーカーのほとんどはテレワーク未経験者であり、「仕事は会社でする」という固定観念が強い。「興味はあっても、オフィスを不在にしていると、同僚や上司にさぼっていると思われてしまう懸念から、テレワークに踏み切れない社員は多い」と今泉氏は指摘する。
損害保険ジャパン日本興亜は2015年から約2万6000人の全社員を対象にテレワーク制度を導入している。運用する過程でハードルを下げる工夫を凝らしながら制度を定着させた。