ネットワーク分野の巨人であるシスコがアプリ指向に動き始めた。ユーザー企業が第3のプラットフォーム上でアプリを迅速に構築し、データを自在に流通できる世界を実現するべくクラウド同士をつなぐ役割を担い、次世代ITの主役を目指す。

 米シスコシステムズがアプリへのシフトを実践するために打ち出した戦略が、「クラウドのクラウド」である。米アマゾン・ウェブ・サービスの「AWS」や自社提供のクラウドサービスを部品として組み合わせ、シスコ製の新たな“傘”をかぶせることで、ユーザー企業がアプリを迅速に開発し、展開できるようにする。

 2014年5月に開催した同社の年次イベントでは、ジョン・チェンバース会長兼CEOが「今後2年間でクラウド関連の事業に合計10億ドル以上を投資する」と宣言。クラウド事業について態度を保留してきたシスコが、ついに積極姿勢に転じた。

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 同社がこの戦略の先に見据えているのは、「Internet of Things(IoT)」の時代に向けたアプリだ。膨大な数のセンサーやソーシャルネットワークなどからデータを集めて蓄積し、分析するには、様々なソフトやコンピューティング能力が必要になる。大量のデータを蓄積できるデータベースやストレージ、リアルタイムに結果を返す分析ソフトなどだ。そうしたサービスを提供するパブリッククラウドやオンプレミスのシステムを連携させ、“データの流通”を仲介する環境を提供することがシスコの狙いだ。

 例えば、センサーから集めたビッグデータは、コンピューティング能力を迅速かつスケーラブルに調達できるパブリッククラウドに一度集約して、データを整形。オンプレミスにはその集計結果のみを送って蓄積し、他の社内アプリと連携させるといった使い分けだ。シスコは、IoTをはじめとする次世代のアプリには、複数のインフラを組み合わせる「クラウドのクラウド」が必須だと踏んだ。

 ただし、こうした使い分けをしようとすると、現状では課題がある。「個々のクラウドサービス同士は互換性がなく、組み合わせにくい状態」というのがシスコの見立てだ。

異種のクラウド同士を連携

  「クラウドのクラウド」戦略では、異種のITインフラ同士をより迅速に組み合わせられるようにする。パートナー企業の力を借りながら、IaaSやPaaSといった基盤サービス、「SAP HANA」などを提供するDBaaS(データベース・アズ・ア・サービス)といったように、サービスの品揃えを充実させる。その上で、複数のパブリッククラウドやオンプレミスから適した環境をユーザー企業が選んで接続できるようにする。異種のITインフラは地理的に離れた場所にあるため、それらを連携させる際はネットワーク機器ベンダーであるシスコの強みも存分に生かせる。

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