ITpro EXPO AWARD 2014で、IoT(Internet of Things)の分野で優秀賞を受賞したのが、Preferred Networksの展示「ディープラーニングを応用した映像解析ソリューション」である(ITpro関連記事:機械学習を商用化へ、Preferred Networksが映像解析に応用

 機械学習の一種である「ディープラーニング」を使い、映像に現れた人間の性別、年齢層、スーツの有無、体の向きなどを識別する。既に大手小売店で実証実験を行っており、2015年には商用化できる見通しという(写真1)。

写真1●Preferred Networksが開発した映像解析ソリューション。この画像例では人の性別、向き、帽子の有無を判別している
写真1●Preferred Networksが開発した映像解析ソリューション。この画像例では人の性別、向き、帽子の有無を判別している
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 映像から来客者の属性を識別する従来の技術の多くは、顔画像を取り出して解析するものだった。このため、顧客の顔を正面から捉えるようカメラを置く必要があり、カメラの設置場所に制約があった。

 Preferred Networksが開発したシステムでは、顔だけでなく、服装など全体の外見から性別を判定する。「どこに注目すれば男女を効率よく見分けられるか」をコンピュータが自ら学習し、例えば「2本の足が露出していれば、女性である可能性が高まる」といった独自のロジックを組み立てる。このため、顔が映っていない後ろ姿でも判定可能だ。

 さらにディープラーニングを応用した映像解析では、学習の元になるデータさえあれば自動的に解析アルゴリズムを生成できるため、汎用性が高い。ITpro EXPOでは、1日目に撮影したブースの画像からコンパニオンの画像300枚を取り出して学習させ、2日目には「コンパニオンを識別し、動線を記録する機能」を実装してみせた。認識精度は90%ほどだったという。

 「IoTが生み出す膨大なデータから、データサイエンティストが特徴を見付け、アルゴリズムを実装し、改善する…というサイクルを自動化し、人間が介在しないシステムにすること」。Preferred Networks 最高戦略責任者の長谷川順一氏は、今回の映像解析ソリューションを開発した狙いをこう語る。

 分析に人間が介在しないIoTの基盤技術の開発は、Preferred Networksの設立に当たっての大きな目的の一つでもある。同社は、ITベンチャーのプリファードインフラストラクチャー(PFI)からスピンアウトする形で2014年3月26日に設立された企業で、PFI社長の西川徹氏が社長兼最高経営責任者に就く(ITpro関連記事:PFIが深層学習専業の「Preferred Networks」を設立、NTTが出資しトヨタと共同研究も)。