今から3カ月ほど前、『「顧客満足度が上がれば売り上げも増える」のウソ』という記事が本欄(記者の眼)で公開された。タイトルを見た瞬間、筆者は「困ったなぁ」と頭を抱えた。なぜなら筆者が所属する日経コンピュータでは毎年、IT製品・サービスの「顧客満足度調査」を実施しているからだ。
日経コンピュータの顧客満足度調査は、ユーザー企業が製品・サービスを選択する際の参考データとしてだけでなく、IT業界各社における営業・サポートの改善活動などにも役立てていただいている。できれば、将来動向を占うKPI(重要業績指標)として、IT業界各社に調査結果を位置づけてもらいたい、という思いもある。それゆえ、『「顧客満足度が上がれば売り上げも増える」のウソ』と言われてしまうと、調査の存在意義が揺らいでしまいかねないと感じたのだ。
では、実際どうなのか――。手前味噌で恐縮だが、日経コンピュータの顧客満足度調査に関して言えば、「顧客満足度が上がれば売り上げも増える」と考えても良さそうだ。「顧客満足度」と製品・サービスの「継続意向度」(次回も購入・導入したいか)の相関係数を計算したところ、両社に相関関係があることが分かったからだ。厳密に言えば、AとBの相関関係だけを取り上げて、因果関係(AすればBになる)まで説明することはできない。だが、「顧客満足度」を上げることに関して、否定的な要素は出てこなかった。
本誌の特集記事では、顧客満足度と継続意向度の相関係数を公表していない(調査の実施・集計を担当している日経BPコンサルティングの有料サービスの一つとして個別に提供)。だが今回は特別に、顧客満足度調査の全26部門における、顧客満足度(調査上は「総合満足度」)と「継続意向度」の相関係数を紹介しよう(表1)。なお、相関係数が0.7以上だと「強い相関がある」、0.4以上0.7未満だと「かなり相関がある」とみてよい。
部門名 | 相関係数 |
---|---|
ITコンサルティング/上流設計関連サービス(メーカー) | 0.7195 |
ITコンサルティング/上流設計関連サービス(情報サービス会社) | 0.7771 |
システム開発関連サービス(メーカー) | 0.7470 |
システム開発関連サービス(情報サービス会社) | 0.7839 |
システム運用関連サービス(メーカー) | 0.7490 |
システム運用関連サービス(情報サービス会社) | 0.7704 |
デスクトップPC | 0.714 |
ノートPC | 0.7012 |
PCサーバー | 0.7558 |
UNIXサーバー | 0.7079 |
ミッドレンジサーバー | 0.7212 |
メインフレーム | 0.6562 |
ストレージ専用装置 | 0.7416 |
ネットワーク機器 | 0.7204 |
グループウエア | 0.7206 |
ERPパッケージ | 0.7622 |
データベースソフト(オープン系) | 0.6479 |
データベースソフト(独自OS系) | 0.7845 |
情報分析・意思決定支援ソフト | 0.7752 |
Webアプリケーションサーバー | 0.6923 |
サーバー仮想化製品 | 0.6539 |
統合運用管理ツール(サーバー/ネットワーク管理系) | 0.7335 |
統合運用管理ツール(クライアント管理系) | 0.7769 |
セキュリティ製品 | 0.7127 |
ネットワークサービス(有線型) | 0.7253 |
パブリッククラウドサービス | 0.7631 |