実は、通信事業者や端末メーカーにとって都合のよいプラットフォーム作りの取り組みは過去にもあった。携帯電話事業者と端末メーカーによるモバイルOSの共通化する「LiMo Foundation」(関連記事)やモバイル向けアプリケーションの共通化を目指した「Wholesale Applications Community(WAC)」(関連記事)といった取り組みだ。いずれの取り組みも、結局はうまく機能しなかった。Firefox OSやTizenが、同じ失敗を繰り返さない保証はあるのか。

 この点について、両団体にかかわり現在ではTizen Associationの議長を務めるNTTドコモ永田清人取締役執行役員マーケティング部長の言葉が、かつての取り組みとの違いをうまく表している。

 永田部長は、「LiMoについては、Linuxベースの端末を作る際に複数メーカーでシェアすれば開発費が何分の1になるという発想が元々のコンセプトだった。エコシステムやビジネスを避け、まずはテクノロジー中心に動いてた。WACは基盤が何もないところで携帯電話事業者が上位レイヤーの話をしているだけだった。今回はベースのテクノロジーの部分をサムスン電子やインテルが担当し、ビジネスモデルの部分については携帯電話事業者が考える新しい枠組みになっている」と語る(関連記事)。

 その言葉の通り、TizenもFirefox OSも既に形となっており、核となる企業や団体が存在している。またHTML5の仕様もほぼ固まり、Webアプリが広まる土壌もできつつある。その点で言えば、確かにかつての取り組みと違った動きになる期待がある。

FIrefox OSとTizenのアーキテクチャの特徴と違い

 続いて、アーキテクチャ面から見たFirefox OSとTizenの特徴と違いを見ていこう。この点については、まずは既存の代表的なモバイルOSであるAndroidにおけるWebアプリを実行する場合と比較すると理解しやすい(図1)。

図1●AndroidとFirefox OS、Tizenのアーキテクチャの比較
図1●AndroidとFirefox OS、Tizenのアーキテクチャの比較
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 Androidの一般的なアプリケーションはJavaで開発し、Dalvik VM上で動作する。アプリの一種であるブラウザーもDalvik VM上で動いており、AndroidでWebアプリを動作させる場合は、このようなブラウザーを経由してライブラリ内のWeb系ランタイムであるWebkit上で実行される。つまりAndroidにおけるWebアプリの動作は、Dalvik VMとWebkitという2種類の実行環境を経由するわけだ。そのためWebアプリの実行環境としては必ずしもスマートとは言えず、そのままでは十分パフォーマンスが出る仕組みにはなっていない。