ノキアとマイクロソフトに加えて,米グーグルが主導するAndroid向けのマーケット・プレイス「Android Market」も2月に有料販売を開始。いずれも端末ベンダーやOSベンダー,サービス・ベンダーが主導して,マーケットを立ち上げるという動きが大きな流れになっている。

 もっとも端末ベンダーやOSベンダーなどが主導するビジネスは,携帯電話事業者のビジネスとも競合することになる。App StoreやAndroid Market,Ovi Storeでは,端末ベンダーやOS/サービス・ベンダーが用意する課金手段を使う。そのため,携帯電話事業者は“中抜き”されてしまい,通信機能だけを提供する“土管”になってしまうからだ。ある端末ベンダー幹部は,「ノキアほどの規模があれば,携帯電話事業者と軋轢(あつれき)が起こっても強引に話を通せるのだろう」と語る。

 携帯電話事業者に歩み寄る陣営もある。Windows Marketplaceは,マイクロソフトによる課金と携帯電話事業者による課金の二つの方法を選べるようになる模様だ。マーケットの売り上げもマイクロソフトと開発者に加え,携帯電話事業者とも収益を分け合う方向を検討しているようだ。

携帯電話事業者の支持を集めるLiMo

 一方のLiMo Foundationは,ベンダーと携帯電話事業者を仲立ちする立場で端末プラットフォームを広めようとする。

 LiMo Foundationで議長を務めるNTTドコモの永田清人執行役員プロダクト&サービス本部プロダクト部長は,「携帯電話事業者と端末ベンダーが集まる中立的な組織であるLiMoに,次々と有力携帯電話事業者が集結している」と語る。実際,LiMoのメンバーには,NTTドコモや韓国SKテレコム,英ボーダフォン,仏オレンジ,米ベライゾン,スペインのテレフォニカ,スイスコムなど大手携帯電話事業者が名を連ねる。携帯電話事業者の意見を取り入れやすい端末プラットフォームというわけだ。

永田 清人氏
LiMo Foundation議長
NTTドコモ執行役員プロダクト&サービス本部プロダクト部長
永田 清人氏

 だがいくら携帯電話事業者の支持が集まっているとはいえ,調整ばかりで開発のスピードが伴わなければ,他の端末プラットフォームの魅力にはかなわない。そこで今回のMWCに合わせて,携帯電話事業者らが策定を進めるWebアプリケーション仕様「BONDI」のサポートを新たに発表した。さらにLiMoが定める基本的な要件を満たした「参照プラットフォーム」を作り,開発を加速する戦略を取ることを打ち出した。

 BONDIのサポートによって,携帯端末内のスケジュール帳やカメラ,GPSなどの機能を呼び出せるウィジェットを作成できるようになるという。端末側の機能を使える点はアプリケーション開発者にも魅力的であり,「(BONDIのサポートは)開発者のコミュニティに対して,LiMoのエコシステムへの参加を促すメッセージになる」(永田議長)。LiMoとしては今後も他の開発者コミュニティに対して積極的にコミットし,開発者を呼び込む姿勢を強調する。