オープンソースのオフィスソフトOpenOffice.orgを採用する自治体が増えている。大阪府交野市、北海道深川市、愛媛県四国中央市、愛知県豊川市、福島県会津若松市は市役所内のパソコンにOpenOffice.orgをインストールし、パソコンを更新する際は原則としてMicrosoft Officeを購入せず、OpenOffice.orgを導入する方針を決めている。また山形県、横浜市、大阪電子自治体推進協議会、「三島市、伊豆市及び伊豆の国市電算センター協議会」がOpenOffice.orgの導入を検討し、具体的な検証を行っている。

表●OpenOffice.orgの導入を決定または検討している自治体
名称発表時期概要
OpenOffice.orgを導入した自治体
大阪府交野市2010年8月パソコンを更新する場合、原則としてMicrosoft Officeを購入せず、OpenOffice.orgを導入。5年間で約1000万円のコスト削減を見込む
北海道深川市2010年8月パソコンを更新する場合、原則としてMicrosoft Officeを購入せず、OpenOffice.orgを導入
愛知県豊川市2010年2月パソコンを更新する場合、原則としてMicrosoft Officeを購入せず、OpenOffice.orgを導入。3年間で約663万円のコスト削減を見込む
大阪府箕面市2009年10月中古パソコン約500台にLinuxをインストールし再生利用、オフィスソフトはOpenOffice.orgを利用
愛媛県四国中央市2009年3月全PC約1100台にOpenOffice.orgを導入、5年で3300万円のコスト削減見込む
福島県会津若松市2008年5月全PC約840台のうち85%をOpenOffice.orgのみに移行し、5年間で1500万円のコスト削減を見込む
導入検証中の自治体
三島市、伊豆市及び伊豆の国市電算センター協議会2010年度「最適なオフィス・ソフトの導入に関する調査研究」として、OpenOffice.orgを検証
大阪電子自治体推進協議会2010年度「OSSのデスクトップ利用に関する調査研究事業」として導入手引の作成や、導入を検討する団体への支援を行う
山形県2009年度より「OpenOffice.org検討ワーキンググループ」を設置、次期オフィスソフトとして検証
神奈川県横浜市2010年7月、OpenOffice.org評価検証委託業者を公募
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コスト削減や市民の利便性向上狙う

 大きな目的はコスト削減だ。多くの自治体で財政状況は厳しさを増している。すべてのパソコンにインストールされるオフィスソフトの費用は小さくない。会津若松市は、2008年からOpenOffice.orgへの移行を進めており、5年で1500万円のコストを削減する計画だ。3年が経過したが「すでに市庁舎のパソコンのうち約7割が有償ソフトを導入せずOepnOffice.orgのみになっており、計画通りコストを削減できている」(会津若松市)という。2012年には全パソコンのうち85%がOepnOffice.orgのみになる見込みだ。大阪府交野市も今年度からOpenOffice.orgを正式採用するが、5年間で約1000万円のコスト削減を見込む。愛知県豊川市も3年間で約663万円のコストを削減する計画だ。

 狙いとして市民の利便性向上を掲げる自治体もある。会津若松市は、市の申請書などをOpenOffice.orgの標準形式で、ISO(国際標準化機構)およびJIS(日本工業規格)によって承認されているODF(OpenDocument Format)で公開している。深川市や交野市もODFの採用を決めている。「市民が必ずしもMicrosoft Officeを持っているわけではない。無償で利用できるOpenOffice.orgで作成したファイルにすることで、市民の利便性向上を図る」(深川市)。

 OpenOffice.orgを自社でも導入しているアシストは、すでに約20の自治体にOpenOffice.orgのサポートサービスを提供しているという。アシスト 公開ソフトウエア事業推進室 小川知高氏は「コスト面に加えOpenOffice.orgの機能やMicrosoft Officeとの互換性が向上してきたことが採用の理由の一つになっている」と語る。