以前、この場を借りてみなさんにネットワークにまつわる素朴な疑問を募集した(参考記事)。この結果、編集部の面々では思い付かない面白い疑問を頂いた。約束通り、寄せられた疑問のうちいくつかを日経NETWORK 2010年1月号の特集「教えて!ネットワークの疑問100」に掲載する。

 ここでは、ITpro読者の皆さんから頂いた疑問と回答を二つほど紹介しよう。まずは、家庭やオフィス、街中で広く使われている無線LANに関するものから。「壁があっても無線LANが使えるのはなぜ?」という疑問だ。

答え:電波に、「反射」「透過」「回折」(電波が回り込んで届く現象)があるためだ。ただし、無線LANで使う周波数帯域や出力では回折の効果は限られている。このため、見通し外に無線LANの電波が届くのは、主に反射と透過による。

 話題の「クラウドサービス」に関する疑問もあった。「クラウド、SaaS、ASPは何が違うの?」というものだ。

答え:クラウドコンピューティングは、顧客に提供されるサービスによってHaaS、PaaS、SaaSの三つに分類できる。HaaSは主に仮想マシンを貸し出すサービス。PaaSは仮想マシンだけでなく、ミドルウエアやアプリケーション開発/実行環境などプラットフォームも提供するもの。SaaSは、アプリケーションをサービスとして提供するもの。ASPはSaaSと同様のサービスやその事業者を指し、両者に大きな違いはない。ただし、SaaSはユーザーが利用する機能だけを選んで契約できるなどカスタマイズ性が高いのに対し、ASPはすべてのユーザーに同一の仕様で提供されるものという定義がされることもある。

 このほか、「ホスト名とドメイン名の違いは?」「URLとURI、正解はどっち?」「IPv4アドレスって本当になくなるの?」「DNSのルートサーバーはどこにある?」といった質問が寄せられた。どれも普段当たり前に使っているけれど、いざ問われるときちんと答えられなさそうなものばかり。これらの回答はすべて特集に掲載した。

 回答を作成してみて、「全く知らなかったこと」や「分かったつもりになっていたこと」に改めて気付かされた。例えば、「DNSルートサーバーの実際の数」などは今回調べて初めて知った。世界には13組のルートサーバーがあり、一つのIPアドレスを複数の物理サーバーに割り当てて運用している。ここまでは普段よく見聞きする話だ。しかしどこに何台あるかについては、きちんと調べたことがなかった。ちなみに具体的な設置場所や台数については、DNSルートサーバーのオペレータ有志で作るこちらのWebサイトが参考になる。

 こうした基本的な仕組みを知ることは、最新ニュースの理解にも役立つ。今回の特集と同じ2010年1月号で取り上げた「Google Public DNS」では,先ほどのDNSルートサーバーと同じく「複数のサーバーで同じIPアドレスを共有する」技術を活用している。この技術は「IP Anycast」と呼ばれている。

 Google Public DNSでは,パソコンから「8.8.8.8」(または8.8.4.4)というIPアドレスを持つDNSサーバーにアクセスする。この8.8.8.8というDNSサーバーは世界各地に設置されていて、ユーザーはそのうち最も近いサーバーに接続するようになっている。ここにIP Anycast技術が使われているのだ。「どこかで聞いたことがある仕組みだな」とピンとくるかどうかで,最新ニュースに対する興味や理解度は変わってくるのではないだろうか。

 さて特集では、「LANケーブルに寿命はある?」「IDSとIPSって何が違う?」「ブラウザーの先読み機能は便利だけどWebのトラフィックは増えないの?」「行動ターゲティング広告はどこまで合法?」など、初心者から上級者まで多くの方が楽しめる質問を用意した。100の疑問を参考に、今年調べ残してしまった疑問を洗い出してみてはどうだろうか。