好評連載中の「ダメな“システム屋”にだまされるな!」は「経営とIT新潮流」サイト読者の半数以上が毎週読んでおり、全コラムの中で最も人気が高い。人気の理由は、IT(情報技術)の導入で重要な役割を担っている“システム屋”と呼ばれる人たちの中に、問題のある人が多いという事実をズバリ指摘しているからだ。

 今やITは、経営改革・業務改善に不可欠なツールになっている。ITが無ければ、業務がストップし、経営は立ち行かない。企業経営者がITを重視し、大きな期待を持つのはそのためだ。だからこそ、ダメな“システム屋”を見抜かなければならない。

 第24回では、著者である佐藤治夫氏が、若き“システム屋”だった昔のことを振り返っている。

 かつてコンピュータは高価で貴重な存在だった。空調がよく効いた立派な部屋に陣取り、コンピュータのお守りに何人もの技術者が当たっていた。コンピュータを利用する機会も限られていた。「1人1台のパソコン」という現在とは比較にならないほど、一般の従業員にとっては縁遠い存在だった。それだけに、システム・エンジニア(SE)と呼ばれる“システム屋”は希少価値があり、給料はメーカーの技術者よりも高かったのだ。

 ところが、今“システム屋”は決して希少価値のある職種ではなくなった。そのあたりに、ダメな“システム屋”が急増しているという理由があるのかもしれない。佐藤氏も第25回で、「このままでは“システム屋”の給料は下がり続ける」と指摘する。理由は、“システム屋”の仕事が少なくなると見ているからだ。

 ここ数年需要が旺盛だった金融業界向けの仕事が一段落するためだという。そんな話を聞くと、優秀な若者が“システム屋”を目指さなくなるのではないかと懸念される。ますます、ダメな“システム屋”の割合が高まってしまうのではないだろうか。ITを活用して企業競争力を高めたいと期待している経営者にとっては、頭が痛い話だ。

 第26回で、ダメな“システム屋”が増えている原因について、佐藤氏はシステム会社の経営者を鋭く批判している。

 「システム会社はやるべき投資をしておらず、目指す姿をきちんと描ききれていないと感じます。蓄積するべきノウハウが的外れだったり、人材育成や評価の方法に問題があったりすることも確かです」と手厳しい。

ITを活用するユーザー企業にも大きな問題があるという指摘

 誤解してほしくない点は、ITを提供する側の“システム屋”だけを問題視ししているわけではないということだ。実はITを活用する側、すなわちユーザー企業にも大きな問題があるという指摘がある。

 大手流通グループの情報システム部門を統括する、あるCIO(最高情報責任者)はこうこぼす。

 「ITを導入するうえで、ユーザー企業、ベンダーの双方がそれぞれの役割を果たさなければならない。ところが、ユーザー企業の多くは、情報システムの開発をベンダーに丸投げしてしまい、自分たちがやるべき役割を果たしていない。IT活用で成果が上がらないのは当然だ」

 自分たちは何もせず、ITベンダーの“システム屋”にすべてやってもらおうとする限り、その企業にとって本当に必要な情報システムなどできるはずがない。まして、丸投げする相手がダメな“システム屋”だとしたら、最悪だ。

「ユーザー企業の情報システム部門の人材不足は深刻」という調査結果も

 日経情報ストラテジーが昨年秋、上場企業のCIOを対象に実施した調査で、ショッキングな結果が出ている。ユーザー企業の情報システム部門を中心に、「人材不足が深刻だ」というのだ。この調査は有力企業369社のCIOが回答している。

 情報システム部門が抱える課題のトップが、「事業に詳しく戦略的な思考ができるIT人材の不足」(回答者の56.6%)。すなわち、要求仕様の策定という重要な役割を担える人材が不足し、戦略的な情報システムの構築ができない状況にあるというのだ。2番目が「IT部門の人手不足」(同43.6%)、3番目が「プロジェクトマネジメント力のあるIT人材の不足」(同26%)と、人材に関する問題がいかに深刻であるかが判明した。

 大手電機メーカーのあるCIOは、「ITスキル標準」をうまく使って、情報システム部門の人材育成に力を入れている。人事評価と連動させながら、“システム屋”一人ひとりの実力を見える化し、毎年毎年レベルアップを図っているという。しかし、先の調査結果を見る限り、人材育成は重要だと認識しながらも、多くの企業はなかなか実践できていないのが現状だ。

情報システム部門のモチベーションを上げるうえで、経営者の責任は重大

 大手サービス会社の前CIOは「人材不足の原因は経営者の責任だ」と指摘する。これまで経営者の多くはITの重要性を理解できず、情報システム部門の地位を上げる努力を怠っていたというのだ。結果として、「情報システム部門は優秀な人材を確保できないという状況から抜け出ることができなかった」という。

 「経営者がITの重要性を理解し、情報システム部門に優秀な人材を回すようにすべきだ。そうすれば、情報システム部門のモチベーションは上がり、さらに優秀な人材が集まる」と、前CIOは主張する。

若手“システム屋”の方々に意見を求める

 いずれにしても、ITを提供する側も、活用する側も、ダメな“システム屋”が急増しているとしたら、ゆゆしき問題である。はたして本当にそうなのだろうか?

 こうした問題について、システム会社に勤務している若い技術者の意見を直接聞いて、問題点を明らかする座談会を9月に開催したいと思う。読者の皆さんも、佐藤氏が指摘する“システム屋”の問題点について、ぜひともご意見を寄せてほしい。

 ITpro「経営とIT新潮流」編集部では、佐藤治夫氏の連載「ダメな“システム屋”にだまされるな!」に関するご意見を募集しています。以下の入力フォームからふるってお寄せください。締め切りは2009年9月7日(金)23時59分です。

 ご意見は、「経営とIT新潮流」やITpro、日経情報ストラテジーなどのサイト・雑誌・書籍で掲載させていただく場合があります。よろしくお願いします。



●あなたのお仕事の内容についてできるだけ具体的に教えてください。(例:「金融機関のシステム子会社勤務のプロジェクトマネジャー」「コンピュータメーカー勤務で、流通業担当のシステム技術者」「パッケージソフトウエア会社勤務のプログラマー」など)

●この連載「ダメな“システム屋”にだまされるな」への意見や、システム会社の経営者に対して言いたいことについて自由にお書きください。

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