前回は,“意見を通したい人”の5つのアドバイスの一つ目として,「情報をたくさん収集する」ことが重要であること,そのために有効なのは「自分にたくさん質問すること」であることを説明しました。

 私は岡田を通して,小島に「仕事の基礎的なスキル」を付与するよう指導を行っていましたが,あるとき,情報システム部長から小島に「システム開発部の中堅エンジニアの研修を企画してほしい」と指示がありました。

 この機会を通して,私は,小島に基礎的能力向上である「仕事を速くする」や,「理解を深くする」,「記憶力を高める」を教えたいと思っていました。そして,特に今回教えたいと思ったのが,「意見を通す」というノウハウです。

 今回のエピソードは,連続コンテンツとして,小島にこれらのノウハウを教えたときのエピソードを紹介しています。今回も,前回の続きとして,“仕事に役立つ7つの科目”の「(5)思考力」に関する「理論構築メソッド」をテーマとした話をします。


“意見を通したい人"への5つのアドバイス

(1)通そうとする仕事や企画の情報や知識などを調べ,理解を徹底的に深めること。

(2)話を徹底的に固めること。

(3)意見が通る人と通らない人の違いを知ること。

(4)説明のシナリオを作り,会話のパスをたくさん準備すること。

(5)実施後は,改善を行い,必ず振り返りをして人の記憶に残すこと。

意見を通すために必要なこと

芦屋:では,昨日の続きを進めよう。小島,君のほうは考えてきたか。「(2)話を徹底的に固めること」,これは君にも説明しているから,今回のケースでどうするのかちょっと説明してみて。

小島:「話を固める」ためには,批判的に見ることが大事だということなので,この研修の反対意見などを収集して,その対策を盛り込むということでしょうか。ネガティブチェックみたいなものですよね。

芦屋:そう。ネガティブチェック。一般に広告代理店などで,クライアントからの質問,反対,批判意見を想定して,自分たちであらかじめ,それらネガティブな意見をぶつけ合うのが「ネガティブチェック」だけど,どんな企画でも,仕事でもネガティブチェックは必要だよ。批判ポイントを想定し,それに対応する考慮を入れ込んでいく・・・意見は,そうやって固くなっていって強くなるんだ。

小島:はい。では次は?

芦屋:次は,「(3)意見が通る人と通らない人の違いを知ること」,これも重要だよ。意見が通る人と通らない人には,生活習慣,考え方,言い方などに多くの違いがある。人間はデリケートで感情的な部分があるから,どんなに素晴らしい考えでも,ロジック的に優れた意見であっても駄目なんだ。

小島:どういうことです?

芦屋:言い方に傲慢さや強引さ,いやらしさがあって,「自分のためだけにやっているんだな」と周囲に思われるような言い方をすると反発を受け,意見が通らなくなることがある。

小島:いわゆる,
 「あいつの言う事は正しいけど,気に入らない」
 「あいつは頭がいいけど,おれはあいつには賛成できない」

という具合ですか?

芦屋:そうだな。

小島:なるほど,そういうこと会社では結構ならありますよね。

芦屋:つまり,「意見が通る」というのは,「アイデアが素晴らしいとか」,「うまくいきそうだ」という,企画自体の完成度だけで決まるものではないんだ。