米国の市民権擁護団体「Center for Democracy and Technology(CDT)」は,「技術の進歩によって政府が監視能力を強めており,米国市民がプライバシを保護するには現在の法規制では不十分」などとするレポートを,米国時間2月22日に発表した。CDTは同レポートで,一般市民のセキュリティを保護するには,技術の進歩が反映された法規制の整備が重要だと指摘している。

 CDTは,政府が膨大な個人情報にアクセスできるようになった理由として,Webベースの電子メールと,位置情報の追跡に利用できる携帯電話の普及を挙げる。

 例えばWebベースの電子メール・サービスの中には大容量を提供して,古いメールの削除が不要と宣伝するものも多い。しかしCDTによると,政府が個人所有のパソコンを差し押さえるには裁判所の令状が必要だが,Webベースの電子メールの場合は,司法審査が不要な召喚状だけで通信履歴を入手できることがある。つまり不正行為の嫌疑がなくても,本人に通知することなしに,サービス・プロバイダに情報開示を要請できるという。

 また,携帯電話は電源を切っている場合も,最寄りのアンテナに識別番号を送信しているため,ユーザーの位置情報を割り出すことが可能である。しかし,政府による位置情報の利用を明確に定める法律はなく,複数の規制や判例を組み合わせて制限しているのが現状だという。

 さらに,キーストロークの記録技術の登場により,ユーザーの操作を記録できるようになった。CDTによると,法規制はこの技術の進歩に追いついていない。

 CDTポリシー担当ディレクタのJim Dempsey氏は,「インターネットを使ったデータの収集・保存技術が日々進歩する一方で,消費者は新しいサービスを利用するために,個人情報を進んで提供している。技術の進歩と,プライバシを確保する法規制とのギャップは広がる一方だ」と懸念を示している。

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