(2001.10.4,John Soat=InformationWeek

 プライバシ保護に新たな法律は必要ない。これが連邦取引委員会 (FTC:Federal Trade Commission)の議長に就任したTimothy Muris氏の公式見解である。

 米国時間10月4日にクリーブランドで開催された「Privacy 2001 Conference」で,Muris氏はプライバシ保護に関する苦情への対応,スパム根絶,企業による秘密保持の契約遵守の徹底など,消費者のプライバシを保護するための施策を明らかにした。新しいプライバシ関連法案は,これらのなかに含まれていなかった。

 同氏は,金融機関がプライバシ・ポリシーを自主的に開示することを定めたプライバシ保護法令「Gramm-Leach-Bliley Act」について,「ほとんど理解できない馬鹿げた注意事項を作成するために,膨大な樹木が無駄になった」と述べた。「この法令を賛同するのは弁護士だけだ。それも自分たちにも適応されると気づくまでのあいだだろう」。

 代わりにFTCは,既存のプライバシ規制を徹底するためにスタッフを50%増強する。プライバシ関連の担当者をフルタイム換算で36名から60名に増やすとともに,プライバシに関する苦情の分析とスパムを追跡するためのデータ・マイニング・ソフトに巨額の投資を行う。このほか数カ月間のうちに,個人情報の窃盗に関わる書類処理を軽減するための「苦情受け付け共通フォーム」を導入する。

 Muris氏は,オンラインとオフラインを区別することなくプライバシ保護を強化すべきだと強調した。「クレジット・カード番号のリストをオンラインのWWWサイトから盗んでも,消費者の郵便受けから盗んだとしても,非常に危険である」。

 FTCは,重要な情報の不正使用について精査することも明らかにしている。医療や金融データ,子供に関する情報,企業の売却または再編成の際にも継続しなければならない機密契約などが対象となる。

 プライバシ保護に新法は必要ないというFTCのスタンスが,企業のプライバシ・ポリシーにどのような影響を与えるのだろうか。「甘くなるのか」との問いに対し同氏は,「プライバシに関して企業を積極的にするうえで,新しい法案こそが障害になる」と語った。

 プライバシ新法の制定を行わないというスタンスには,いくつかの企業が賛同している。米Nationwide Insuranceのプライバシ担当主任のKirk Herath氏は,Privacy 2001 conference開催前日のパネル・ディスカッションで次のように語った。「これ以上のプライバシ法案は必要ない。必要なのはもっと法律を少なくし,分かりやすくすることだ」。

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