調査内容 2009年度の分野別IT予算額(予測)
調査時期 2008年12月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3229件(1207件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った調査で,回答者が執行・承認権限を持つ分野の2009年度(2009年4月~2010年3月期)のIT予算額(見込み)を,適用業務やITインフラの分野,ハード/ソフト別などで聞いた。

 平均予算額(算出方法は下の「調査概要」参照)が最も大きかった分野は適用業務アプリケーション8分野(その他の適用業務分野を除く)の中の「SCM」で,約2660万円。次いで「新規システム開発」の約2150万円,業務アプリの「生産管理」と「経営戦略系」が平均約1980万円,「CRM・顧客関連」が同約1920万円,システム・インフラ7分野(その他のインフラ分野を除く)の中の「情報系」が約1870万円。「既存システムの再構築」も同約1810万円で比較的大きな平均予算額という結果になった。

 平均予算額上位に挙がった分野の顔ぶれは,過去数回の「分野別四半期予算額」の調査での平均予算額上位を占めていた分野とほぼ一致するが,インフラ分野の中でほぼ毎回平均予算額のトップを「情報系」と争っていた「運用・危機対策系」が,今回の2009年度の予算見込みでは中位に後退しているのが目立つ。

「予算ゼロ」45%,「1億円以上」8%と両極端の比率が高い「SCM」

 図示していないが,この2009年度予算についての回答の内訳を,2月9日付けの記事で紹介した2009年第1四半期(2009年1月~3月)の分野別IT予算額の見込みについての回答の内訳と比較してみた。

 まず「2009年度は予算ゼロ」(事前の設問で「その分野の予算執行・承認権限者である」とした回答者にだけ,同分野の予算額の見込みを聞いている)という回答者の比率が高い分野は,業務アプリの「SCM」(44.7%),「SFA・営業系」(42.6%),「CRM・顧客関連」(37.5%)の三つが突出している。このほかの「2009年度は予算ゼロ」30%以上の分野は,「物流」(31.8%)と「新規システム開発」(31.5%),インフラ分野の「アプリケーション(システム)間連携基盤系」(30.1%)のみ。

 逆に「2009年度は予算ゼロ」という回答者の比率が低い分野は,「ハードウエア購入」(12.5%)と「運用・保守開発」(12.6%)だった。

 次に,予算ゼロではないが2009年度の投資額が極めて小さいという意味で,「2009年度予算は100万円未満(に最も近い)」とした回答者の比率を,上記の「予算ゼロ」の回答者の比率と合計した「緊縮投資」層の比率を見ると,最も大きいのはインフラ分野の「インターネット系」で70.2%。以下「人事・給与」(65.8%),「アプリケーション(システム)間連携基盤系」(65.0%),「会計」(62.0%),「ストレージ系」(61.6%),「ソフトウエア購入」(61.3%)の順である。

 逆にこの「緊縮投資」層の比率が低いのは「既存システムの再構築」(43.9%),「運用・保守開発」(44.1%),「生産管理」(48.5%)。面白いことに,「予算ゼロ」の比率が高い「SCM」と「SFA・営業系」「物流」「新規システム開発」の4分野が,「予算ゼロ」と「100万円未満」の合計比率では下から4位(SFA・営業系の53.2%)~7位(SCMの55.2%)を占めている。

 「SCM」が平均予算額でトップ,かつ「予算ゼロ」とした回答者の比率も最大とだったのは,「予算ゼロ」と「比較的高額の予算を見込む」の両極の選択肢に回答が集まったためである。「SCM」の2009年度予算についての回答のうち,「1億~3億円」と「3億円以上」の2つの選択肢が合計7.9%で,この比率も図示した20分野(その他の分野を除く)の中で最大(2番手は「CRM・顧客関連」の6.3%)である。

危機対策,ストレージ,ソフトウエア投資は「2009年度は予算ゼロから脱出」率が高い

 次に,2009年第1四半期の予算見込みへの回答の内訳と,上記の2009年度の予算見込みについての回答の内訳を比較すると,まず,2009年第1四半期より2009年度の方が「予算ゼロ」とした回答者の比率が高い,つまり「2009年1月~3月よりも,4月以後に予算ゼロにする比率が高い」分野は,「SFA・営業系」の1分野のみ。ただし0.8ポイントのわずかな拡大(第1四半期41.8%→2009年度42.6%)である。「CRM・顧客関連」(第1四半期38.9%→2009年度37.5%)も「予算ゼロ」とした回答者の比率がほぼ横ばいだ。

 これ以外の18分野(その他の分野を除く)では,2009年第1四半期から2009年度に進むと,「予算ゼロ」という回答者の比率が6ポイント以上低下する。特に大きく「予算ゼロ」が減るのは,「運用・危機対策系」の13.9ポイント(第1四半期38.9%→2009年度25.0%),「ストレージ系」の13.2ポイント(同36.4%→23.2%),「ソフトウエア購入」の12.7ポイント(同27.2%→14.5%)などの分野だ。

 2009年第1四半期と2009年度で,「予算ゼロ」と「100万円未満」を合計した「緊縮投資」層の比率を比べると,「CRM・顧客関連」はこの比率が6.4ポイント拡大(第1四半期51.9%→2009年度58.3%),「アプリケーション(システム)間連携基盤系」が微減(同66.0%→65.0%)で,他の分野は2009年度に進むと「緊縮投資」層の比率が約4~18ポイント減る。特に大幅なのは「物流」の18.1ポイント(同72.6%→54.5%)で,ほかに「生産管理」(同64.4%→48.5%),「既存システムの再構築」(同58.6%→43.9%),「運用・危機対策系」(同70.0%→55.3%)の各分野も15~16ポイントの大幅な減少となっている。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,何らかの予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム予算の総計を聞いた。
 新規購入や開発中の案件がなく、期間中のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い、減価償却費のみの場合、それらの総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが、自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「平均の予算額」は,選択式(最も近いものを1つ選ぶよう求めた)回答の,「当期(2009年度)はゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」を4000万円,「5000万円以上1億円未満」を7500万円,「1億円以上3億円未満」を2億円,「3億円以上」を4億円に換算して平均した。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 調査実施時期は2008年12月中旬,調査全体の有効回答は3229件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1207件。

図●来年度(2009年4月~2010年3月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)
図●来年度(2009年4月~2010年3月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)