調査内容 2011年の重点IT投資分野
調査時期 2008年1月下旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 2414件(1035件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数

 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った調査で,3年後の2011年に回答者の企業が最近話題の28分野(下記「調査概要」を参照)の中から,最も重点投資すると見込まれる分野を聞いたところ,トップは「基幹システム(自社開発での再構築)」で15%強,続いて「内部統制:IT全般統制」と「内部統制:業務処理統制」がともに約13%の回答者から最重点分野に挙げられた。この3分野に次ぐのは「基幹システム(パッケージのバージョンアップないしリプレース)」,「情報漏洩対策」,「基幹業務パッケージ(ERPなど)導入」でともに約8%,上位3分野との間には約5ポイントの差がある。

 3年後の最重点投資分野で「基幹系の自社開発」と「基幹系パッケージの更新」,「基幹系パッケージの導入」の支持を合計すると全体の約3割強。その半数が「自社開発」,“更新”と“(新規)導入”を合わせた「パッケージ」が半数という構図だ。

“システム戦略立案”の担当者は「基幹系の自社開発」を強く支持

 図示していないが,今回の回答者には「担当している主なシステム業務の,システムのライフサイクル上での位置付け」を聞いている(下記「調査概要」を参照)。3年後の最重点投資分野で「基幹系の自社開発」を挙げた回答者には“システム戦略立案”の担当者が多く,全回答者平均を6ポイント強上回る21.7%が「自社開発」を支持した。“システム戦略立案”の担当者は「基幹系パッケージの導入」についても平均をやや上回る9.9%が最重点投資分野としたが,「基幹系パッケージの更新」は「最重点」とする比率は低く,「二番目の重点投資分野」として挙げる傾向が目だった。

 その「二番目の重点投資分野」では,全回答者平均で見ると「IT全般統制」が約15%,「情報漏洩対策」と「業務処理統制」が9%台の支持を集めた。また「三番目の重点分野」には「情報漏洩対策」と「内部要員のレベルに応じたスキル養成」が10%弱,「IT全般統制」が8%強の票を得た。

 「最重点~三番目」の合計で見ると,重点投資分野のトップは「IT全般統制」で36.4%。次いで約9ポイント離れて「情報漏洩対策」(27.6%),「基幹系の自社開発」(27.4%),「業務処理統制」(27.0%)の3分野がほぼ横並び。そこからまた約9ポイント離れて5番手に「スキル養成」(17.9%),以下「基幹系のパッケージ更新」(15.7%),「サーバー仮想化」(15.0%),「Windows Vista」(13.8%),「基幹系パッケージ(ERPなど)導入」(13.7%),「CRM」(10.3%)までが10%以上となった。

 全体として見ると,2月18日付けの記事で紹介した「今年(2008年)のIT投資予想額」の上位を占めた「基幹系」と「内部統制」と「情報漏洩対策」が,3年後の重点投資分野でも多くの回答者の支持を集めている。ただし2008年の投資予想額では中位~下位に位置する「スキル養成」や「Windows Vista」が,3年後の重点分野では上位に進出。逆に「ブレード・サーバー」や「ストレージ仮想化」は2008年予想での“中の上”の位置から,3年後の重点分野では下位集団に沈んでいる。

「スキル養成」には“システム戦略立案”担当者が冷淡

 「スキル養成」は,前述の「ライフサイクル上の担当業務」で“保守/修正/機能追加/廃棄”に属する回答者が比較的高率で「二番目の重点分野」に挙げ(8.9%),「三番目の重点分野」にはほぼ全域の回答者が9%~12%の高率で挙げた。しかし“システム戦略立案”に属する回答者だけは「スキル養成」にやや冷淡で,「三番目」でも5.5%という低い支持率だった。「Windows Vista」は“システム戦略立案”と“RFP/要求分析/要件定義”に属する回答者が冷淡で,“設計/実装/テスト/移行”と“運用/活用支援”と“保守/修正/機能追加/廃棄”に属する回答者が重点分野として挙げる率が高かった。

 話題性から見ると上位に来そうな「SaaS/ASP」は,2008年の投資予想で28分野中23番目,3年後の重点分野(最重点~三番目の合計)ではやや上がって16番目だが,6.1%の回答者から「重点分野」に挙げられるにとどまった。また本調査の自由意見欄では毎回かなりの数の回答者が「ITの投資対効果(ROI)」を疑問点や問題点として挙げているのだが,今回の調査の「重点投資分野」で「ROI測定の標準化,定量化」を選んだ回答者は8%弱(最重点~三番目の合計)に過ぎなかった。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者に,以下のITキーワード28種を挙げて,今年(2008年),来年(2009年),3年後(2011年)の投資意向を聞いた。
 「内部統制:業務処理統制」,「内部統制:IT全般統制」,「基幹業務パッケージ(ERPなど)」,「CRM(顧客情報管理)システム」,「RFID(無線ICタグ)」,「企業内blog,企業内SNS,企業内Wiki」,「企業内IP電話,無線IP電話」,「NGN(Next Generation Network)対応の通信機器:音声・動画系用途」,「NGN対応の通信機器:(音声・動画以外の)高速データ通信系用途」,「サーバー仮想化」,「ストレージ仮想化」,「ブレード・サーバー」,「シンクライアント」,「SaaS(Software as a Service),ASPサービス」,「SOA (サービス指向アーキテクチャ)」,「ITIL(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)第3版」の16種は,2007年6月調査と共通。今回新たに「情報漏洩対策」,「基幹システム(自社開発での再構築)」,「基幹システム(パッケージのバージョンアップないしリプレース)」,「モバイル活用(ネットワーク・サービス)」,「モバイル活用(クライアント,端末)」,「BCP/ディザスタリカバリ」,「BI/KM/データ・ウエアハウス」,「Windows Vista」,「Windows Server 2008」,「IT投資対効果測定の標準化,定量化」,「内部要員のスキル・レベル確認」,「内部要員のレベルに応じたスキル養成」の12種を加えている。
 2011年については,「3年後(2011年)に御社でIT投資の重点になっているであろう分野は,次のうちどれだと予想されますか」という形で,上記の28種から最重点分野,2番目,3番目の重点分野を一つずつ選択してもらった。
 「担当している主なシステム業務のライフサイクル上での位置付け」は,「システム戦略立案」,「提案依頼/業者選定」,「要求分析/要件定義」,「詳細設計/実装」,「単体・統合テスト」,「システム移行」,「運用/活用支援」,「保守/修正/機能追加」,「システムの廃棄」の9つの選択肢から最も近いもの一つを選択してもらった。本文中の“RFP/要求分析/要件定義”は「提案依頼/業者選定」と「要求分析/要件定義」の合計。“設計/実装/テスト/移行”は「詳細設計/実装」と「単体・統合テスト」と「システム移行」の合計。“保守/修正/機能追加/廃棄”は「保守/修正/機能追加」と「システムの廃棄」の合計である。
 調査実施時期は2008年1月下旬,調査全体の有効回答は2414件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1035件。

図●3年後(2011年)にIT投資の重点になっているであろう分野
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