調査内容 2008年の注目分野へのIT投資予想額
調査時期 2008年1月下旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 2414件(1035件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数

 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った調査で,今年(2008年)に回答者の企業が最近話題の28分野(下記「調査概要」を参照)にIT投資する予想額を聞いたところ,平均投資金額では,「基幹システム(自社開発での再構築」が約5000万円で,2位以下の各分野に1000万円近い大差を付けてトップ。2位「基幹業務パッケージ(ERPなど)の導入」が約4000万円,3位「基幹システム(パッケージのバージョンアップないしリプレース)」が約3400万円で,基幹システムの導入や再構築がトップ3を占めた。

 これに次ぐのが日本版SOX法(金融商品取引法)対策関連で注目された「内部統制」関連の分野。「内部統制:業務処理統制」が約2400万円,「内部統制:IT全般統制」が約2300万円で,合計約4700万円となった。

 7カ月前の2007年6月調査(以下前回調査)で聞いた「2007年度の平均投資額」での結果と比較すると,「基幹業務パッケージ(ERPなど)」は前回の約4500万円から500万円強減少。「内部統制:IT全般統制」も前回調査より約300万円減少した。

 逆に前回調査より平均投資額が大きく上昇したのは「SOA(サービス指向アーキテクチャ)」(約520万円増)と「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」(約330万円増),「RFID(無線ICタグ)」(約240万円増)。SOAは倍増,ITILとRFIDも約1.5倍~1.6倍に増えた。前回調査でも聞いた16分野の中で順位が上昇したのは,このSOAとRFID,および「IT全般統制」の減額で入れ替わりに上昇した「業務処理統制」の3分野のみ。全体として見ると,7カ月間では,IT投資対象の優先順位に大きな変動はない,という結果だった。

 図示していないが,2008年度に投資する(投資額がゼロでない)企業の比率では,今回調査から対象に追加した「情報漏洩対策」が76.2%で他の項目に約10ポイントの差を付けてトップ。次いで「IT全般統制」(66.7%),「業務処理統制」(62.4%)の「内部統制」関連2項目が,前回調査とほぼ同じ比率でトップ3に入った。以下,これも今回調査から追加した「内部要員のレベルに応じたスキル養成」と「基幹システムの自社開発再構築」の2分野が約56%で並んでいる。

 ちなみに選択式回答の区分別の傾向で見ると,最低区分「100万円未満」を選択した回答者の比率が目だって高いのは「Windows Vista」と「情報漏洩対策」の約28%。次いで「スキル養成」と「内部要員のスキル・レベル確認」がそれぞれ約25%,約22%だった。逆に最高区分の「3億円以上」は「基幹システム」関連の3分野が約5%~8%で比較的高率。残り25分野はいずれも3%未満で小数点以下の僅差だが,「BCP(事業継続計画)/ディザスタ・リカバリ」「ストレージ仮想化」「情報漏洩対策」「IT全般統制」「業務処理統制」といった項目が上位に挙がった。

 この結果から見ると,今年2008年にITビジネスとして広く受注件数を見込めるのは「情報漏洩対策」や「内部統制」,「スキル養成」分野。このうち低料金ソリューションへの需要が強そうなのが「情報漏洩対策」や「スキル養成」,逆に高額の商談が成立しそうなのは「情報漏洩対策」や「内部統制」。そのほか大型商談を狙うなら「基幹システム」「BCP」「ストレージ」分野も有望,ということになりそうだ。

 明日からは,来年(2009年)と3年後の2011年の重点投資項目の結果を紹介する。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者に,以下のITキーワード28種を挙げて,今年(2008年),来年(2009年),3年後(2011年)の投資意向を聞いた。
 「内部統制:業務処理統制」,「内部統制:IT全般統制」,「基幹業務パッケージ(ERPなど)」,「CRM(顧客情報管理)システム」,「RFID(無線ICタグ)」,「企業内blog,企業内SNS,企業内Wiki」,「企業内IP電話,無線IP電話」,「NGN(Next Generation Network)対応の通信機器:音声・動画系用途」,「NGN対応の通信機器:(音声・動画以外の)高速データ通信系用途」,「サーバー仮想化」,「ストレージ仮想化」,「ブレード・サーバー」,「シンクライアント」,「SaaS(Software as a Service),ASPサービス」,「SOA (サービス指向アーキテクチャ)」,「ITIL(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)第3版」の16種は,2007年6月調査と共通。今回から新たに「情報漏洩対策」,「基幹システム(自社開発での再構築)」,「基幹システム(パッケージのバージョンアップないしリプレース)」,「モバイル活用(ネットワーク・サービス)」,「モバイル活用(クライアント,端末)」,「BCP/ディザスタリカバリ」,「BI/KM/データ・ウエアハウス」,「Windows Vista」,「Windows Server 2008」,「IT投資対効果測定の標準化,定量化」,「内部要員のスキル・レベル確認」,「内部要員のレベルに応じたスキル養成」の12種を加えている。
 2008年については,「御社において上記各分野への投資は,年間でどの程度の額になると予想されますか」(最も近いものを一択)という形で,選択式で回答を求めた。本文中の「平均の予算額」は,選択式回答の「ゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」を 4000万円,「5000万円以上1億円未満」を7500万円,「1億円以上3億円未満」を2 億円,「3億円以上」を4億円に換算して平均した
 調査実施時期は2008年1月下旬,調査全体の有効回答は2414件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1035件。

図●今年(2008年)の注目分野別IT投資予想