いよいよ10月24日から携帯電話の番号ポータビリティ・サービスが始まる。番号ポータビリティとは,電話番号を変えずに携帯電話事業者を変更できるというサービスである。KDDIとボーダフォンは9月1日から,NTTドコモは9月10日から予約サービスを実施している。しかし,PHSは取り残されたままで,IP電話の050番号は蚊帳の外。ここに,FMC(Fixed Mobile Convergence)が加わる。番号ポータビリティへのニーズは,携帯電話だけのことではないはずだ。


番号ポータビリティは誰でも歓迎

 総務省は2005年10月,約3000人を対象にMNP(番号ポータビリティ)の利用意向について調査した。その結果,「変更したい=14.7%」「思わない=30.1%」「わからない=55.2%」。これは,事業者変更にかかる手数料が決定していない時点の調査結果である。

 事業者変更にかかる費用はその後,現在利用中のユーザーに対して転出手数料2100円,移行先で新規加入時と同じく契約事務手数料3000円前後と決まった。手数料が明らかになった時点で調査していたら,結果は変わっていただろう。だた,手数料を無視して単純に「同じ電話番号を使い続けたいか?」と聞いたら,ほぼ全員が「はい」と答えるのではないだろうか。

 番号ポータビリティに対するニーズは,携帯電話だけに限らない。PHSはもちろん,固定電話であっても,同じ番号を使い続けたいというニーズは多い。しかし,実態はそれに応えていない(図1)。

図1●番号ポータビリティの状況
携帯電話のポータビリティが可能になっても,番号の持ち運びができないケースが多い。

 従来,ユーザーを直接収容する固定電話(直収電話)はNTTの独占であり,事業者を変えるという概念はなかった。その後,直収電話を提供するNTT以外の事業者が登場し,事業者を変えてもNTTで使っていた電話番号は変えずに利用できるようになった。つまり,「03-XXXX-XXXX」などのいわゆる0AB~J番号では,すでに番号ポータビリティが実現していたのだ。しかし,引っ越しなどで電話を使用する場所が変わると,電話番号の変更は避けられなかった。現在の常識からすると,0AB~J番号の「市外局番=地域」というルールを変更するわけにいかない。

 ただし,地域が変わっても変えなくてよい固定電話の番号がある。それは,050で始まるIP電話用の番号である。東京で使用しても北海道で使用しても構わない。この特徴を生かそうと,進んで050番号を利用する企業もある。

 もちろん050番号でも,現状ではIP電話の事業者(プロバイダ)が変わると電話番号を変更せざるを得ない。電話番号の割り当て/管理や事業者のルーティング処理などを考えて,050-XXXX-YYYYのうち050-XXXXを,総務省が事業者ごとに割り当てているからだ。これを崩すと,番号の管理や実際の運用が複雑になるが,その気になれば,事業者間の050番号のポータビリティは実現できるはずだ。


FMCではポータビリティがより重要に

 「ワンフォン/ワンナンバー」を特徴とするFMCでは,さらにポータビリティが重要になってくる。FMCを直訳すれば,固定通信と移動通信の融合である。その定義はあいまいで,すでにFMCを名乗るサービスが登場しているが,その内容はさまざまである。「固定電話と携帯電話などを一括払い」というものや,1台の携帯端末を固定電話としても携帯電話としても使えるものがある。

 ワンフォン/ワンナンバーの代表が,NTTドコモの「N900iL」で代表される3G/無線LANデュアル端末である。オフィス内では,無線LANを使った固定電話回線の端末として,外出先では携帯電話として使える。どこにいても,固定回線の電話番号で着信できる。またフュージョン・コミュニケーションの「ビジネスFMCサービス」というサービスもある。転送を使い,1つの050番号で,IP電話やSkype,携帯電話で発着信できるサービスである(参考記事)。いまのところ,企業向けが中心であるが,今後,家庭向けサービスへの登場が期待されている。

 FMCでは,「電話番号は個人や企業などの“固有のもの”である」という認識がより強まっていく。取引先などにオフィスの固定電話番号と携帯電話番号を知らせていたのが,FMCの電話番号のみ伝えるだけで済むようになるからだ。

 しかし,FMCの番号ポータビリティには不安が残る。

 FMCでは,携帯電話の090/080とPHSの070,IP電話の050を利用できる(参考記事)。番号の継続使用を考えれば,番号ポータビリティが可能な携帯電話番号を“ワンナンバー”にしたい。しかし,通話料金が高い携帯電話の番号だけを,取引先に伝えるのは抵抗がある。かといって,IP電話の050番号は,事業者を変えると番号も変えなければならない。

 実は,FMCでは090/080,050に加えて,新規に060番号を使えるようになる予定だ。この060番号の番号ポータビリティがどうなるか現状では未定だが,事業者間の番号ポータビリティの確保を前提に運用してほしいものである。もちろん,050番号についても,同じように番号ポータビリティを確保してほしい。

 個人的には,メール・アドレスのポータビリティをまず,どうにかしてほしいのだが・・・。