写真1●複数の通信機器を仮想化で統合する「NFV」の概念
写真1●複数の通信機器を仮想化で統合する「NFV」の概念
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写真2●NFVによる携帯コア網の統合の概念例
写真2●NFVによる携帯コア網の統合の概念例
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写真3●同社による改善前後のKVMのリアルタイム応答性の比較
写真3●同社による改善前後のKVMのリアルタイム応答性の比較
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写真4●ウインドリバー営業技術本部の志方公一本部長
写真4●ウインドリバー営業技術本部の志方公一本部長
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 リアルタイムOS最大手の米ウインドリバーは2013年8月1日、携帯コア網などを仮想化する「NFV(Network Functions Virtualization)」などに向けて、リアルタイム応答性を高めた仮想化ソフト「Wind River Open Virtualization Profile(OVP)」の出荷を開始すると発表した。日本法人のウインドリバーが7月31日に説明会を開催し、OVPについて説明した(写真1、写真2)。

 OVPは、Linuxカーネル上でハイパーバイザを実現するソフト「KVM」を基にして開発した。組み込み機器向けLinuxである「Wind River Linux」のアドオンソフトという形である。

 具体的には、組み込みLinuxなどでカーネルをプリエンプティブル化しリアルタイム応答性を高めるために用いられるリアルタイム・パッチに、KVMを対応させた。通常のKVMでは、仮想化のオーバーヘッドにより、仮想化がない場合と比べて割り込み応答時間が悪化し、平均で14.7μs、最悪値で700μs以上かかる。

 今回の改良版のKVM(OVP)では、割り込み応答時間を平均で3.7μsに短縮できた。24時間のテストでの最悪値は20μs程度と、ジッターも大幅に低減した(写真3)。

 割り込み応答時間を大幅に短縮したことで、これまで複数の専用機器で構成していた携帯コア網などを、汎用のIAサーバーのKVM上で動作するソフトウエアに集約できるようになるという。「通信会社には、新しいサービスを短期間に低コストで立ち上げたいといったニーズがある。まずはこうした市場を狙っていく」(ウインドリバー営業技術本部の志方公一本部長、写真4)。

 仮想化ソフトの管理機能としては、「oVirt」のほか、今後は「OpenStack」などに対応する。

 NFVについては、2012年10月に欧州の通信分野の標準化団体「ETSI」がグループを設立しており、現在、大手の通信機器メーカーが試行している状況である。2013年2月に開催された展示会「Mobile World Congress 2013(MWC2013)」では、NEC(関連記事1)やエリクソン(関連記事2)らがNFV関連のデモを展示している。