写真1●KDDIの田中孝司社長
写真1●KDDIの田中孝司社長
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写真2●MNPの改善傾向
写真2●MNPの改善傾向
田中社長は「ARPUが高いユーザーを獲得するためにもMNP重視になる」という考えも示す。
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 KDDIは2012年4月25日、2011年度(2011年4月~2012年3月期)の通期連結決算を発表した。売上高は対前年度比4%増の3兆5721億円、営業利益は同1.2%増の4776億円の増収増益となった。純利益は法人税の調整などの影響から同6.5%減の2386億円である。決算説明会に登壇した同社の田中孝司社長(写真1)は、「期初に設定した四つのKPIは劇的に改善。また3M戦略も順調な立ち上がりを示している」と話し、順調な決算内容であるとアピールした。

 同社が設定した四つのKPIとは、(1)au解約率、(2)MNP、(3)純増シェア、(4)データARPU、を指す。2011年度の解約率は通期ベースで0.66%と過去最低水準に低下。MNPは前年度が36万2000の転出超だったのが、2011年度は通期で27万3000の転入超と大幅に改善した(写真2)。純増シェアも2011年度通期で前年度から10.1ポイントプラスの27.2%に、データARPUも前年度から10.3%の伸びを示すなど、すべての指標で改善したことから、田中社長は「auモメンタムは完全に回復した」と強調した。

 このようなauモメンタム回復の原動力となったのがスマートフォンへの急速なシフトである。期初は400万台のスマホ販売を見込むとしていたが(関連記事)、結果的には予想を大幅に上回る通期で563万台のスマホ販売となった。総販売台数の41%に当たる。田中社長はこのようなスマホシフトに占めるiPhoneの貢献について、「貢献の度合いは非常に大きい。少ないときで10%、多い時で40%程度が週次のスマホ販売におけるiPhoneの割り合い」と語った。

3M戦略は3月末でau側が66万、固定側が44万契約に

写真3●auスマートバリューの初期動向
写真3●auスマートバリューの初期動向
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写真4●損益分岐点も超え始めているという
写真4●損益分岐点も超え始めているという
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 2012年1月に正式発表した「3M戦略」(関連記事)の初期動向もこの日、明らかにした。FTTHおよびケーブルテレビなど指定の固定通信サービスと組み合わせて利用することでauスマートフォンの利用料金を割り引く「auスマートバリュー」について2012年3月末までの加入者数は、auスマートフォン側で66万、固定通信側で44万となっているという(写真3)。田中社長は「順調な立ち上がりで、非常に良い結果。提携先の固定系事業者からも感謝されている」と評価した。

 auスマートバリューは、固定と携帯のセット割サービスに見えるが、同社の狙いは、固定と携帯の双方でクロスセルを進め、新規ユーザーを獲得して売り上げを拡大することにある。ここでポイントとなるのが加入者の中の新規ユーザー比率だ。田中社長はこの日、携帯側は20%の新規比率、固定側は12%の新規比率が損益分岐点であることを明かした。実際の新規比率だが、固定側は週次で申し込み開始当初から12%の損益分岐的を大幅に上回り、携帯側は3月の最終週付近で新規比率が20%を超え始めているという(写真4)。3M戦略が単なる割引サービスではなく、実際に利益が出るモデルである点も強調した。

2012年度は全販売台数の7割に当たるスマホ800万台販売を予測

 2012年度(2012年4月~2013年3月期)の業績予想は、売上高は前年度比2%増の3兆5800億円、営業利益は同4.7%増の5000億円とした。純利益も含めて増益を目指すとする。au純増数の見通しは今期と同水準の210万、スマホ販売台数の予測は全販売比率の7割に当たる800万台、FTTH純増数の見通しは前年比70%増の63万とした。

 また2012年度からは、これまで「移動通信」「固定通信」「その他」と分けてきたセグメントを変更し、3M戦略に基づいて、「パーソナル(移動/固定)」「バリュー」「ビジネス(移動/固定)」「グローバル」に改める。

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