写真1●KDDIの田中孝司社長
写真1●KDDIの田中孝司社長
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写真2●今期のスマートフォンの販売予測
写真2●今期のスマートフォンの販売予測
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 KDDIは2011年4月25日、2010年度(2010年4月~2011年3月)の通期連結決算を発表した。売上高は対前年度比0.2%減の3兆4345億円、営業利益は同6.3%増の4719億円の減収増益となった。

 連結の増益は10期連続、黒字化を経営コミットメントとしていた固定通信事業は、重複するネットワーク設備のスリム化などが奉功して7期振りに黒字に転換した。黒字幅は240億円であり、期初目標としていた100億円を大幅に上回っている。なお東日本大震災で受けた基地局や通信網の被害の影響として、176億円を特別損失として計上した。

スマートフォンへの一層のシフトを進める

 決算説明会に登壇した同社の田中孝司社長(写真1)は2011年度の取り組みについて説明し、今期を「次なる成長に向けたスタートの年」と位置付けた。具体的には、移動通信事業の勢いの回復、固定通信事業の増収増益の確立、さらに新たな時代への準備を進めるとした。

 移動通信事業ではスマートフォンへのシフトを一層進める。2010年度のスマートフォンの販売台数は109万台(販売台数比率9%)だったが、2011年度は400万台(同33%)と大幅増を見込む(写真2)。スマートフォンへの機種変更する前後でデータARPUは約1600円上昇する傾向にあるといい、2011年度のデータARPUは前年度から220円増の2540円を見込む。2011年度の音声ARPUは同620円減の2000円を予測し、2011年度中に音声ARPUとデータARPUが反転する見込みとした。

 田中社長がこれまで繰り返し表明してきたように、今期同社が出す端末の半分以上がスマートフォンになる。おサイフケータイやワンセグなど日本の定番機能を搭載するスマートフォンに加え、グローバルモデルやWiMAX対応モデルも拡充する。

 なお、2010年秋にIS03を発売して以降、解約率も低下傾向にあるという。2011年度の解約率は、2010年度の0.73%を下回る0.70%を見込む。

新事業ビジョン「3M戦略」も明らかに

 田中社長はこの日、新たな時代への準備としてFMBC戦略に変わるKDDIの新たな中長期的なビジョンとなる「3M戦略」を明らかにした。3Mとは、「マルチユース」、「マルチネットワーク」、「マルチデバイス」の略。いろいろなコンテンツやサービスを、最適なネットワークで、好きなデバイスで利用できるという構想になる。

 田中社長はKDDIならではの強みとして、特にマルチネットワークを挙げ、急増するトラフィックを複数のネットワークで収容しより高速で快適な通信環境を提供していきたいとした。それに伴って、LTEに多く割り当てていた設備投資金額を見直す。これまで2014年度末までに5150億円をLTEの設備投資に当てるとしていたが、それを3000億円に圧縮する。

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