2012年2月27日から3月1日までスペイン・バルセロナで開催中のMobile World Congress 2012(MWC)では、これまでタブレット端末への搭載が中心だったクアッドコアプロセッサがスマートフォンに搭載され始めていることが展示やデモから実感できる(写真1)。いずれの機種も米NVIDIAのTegra 3を搭載し、その処理性能の高さをうたっている。
富士通は「Ultra Hi-Spec」を掲げた未発表のTegra 3搭載スマートフォンを展示・デモしている。同機は1月にも米国・ラスベガスで開催された2012 International CESで展示されたが、当時は公式にはTegra 3搭載であることをうたっていなかった。MWCでは富士通自身がTegra 3であることを公表。「今夏には市場に出したい」(富士通 モバイルフォン事業部 マーケティング統括部 セールスプロモーション部の坂本秀幸マネージャー)としている。同機はクアッドコアだけでなく、LTEへの対応もうたっている。現行のスマートフォンの中では最も高スペックな機種と言える。Android 4.0を搭載し、ディスプレイは4.6インチ。IPX5/7およびIPX5X相当の防水・防塵対応である(写真2)。
富士通のほか、Tegra 3を搭載するスマートフォンとしては韓国LGエレクトロニクスの「Optimus 4X HD」(写真3、関連記事)や台湾HTCの「HTC One X」(写真4、関連記事)、中国ZTEの「ZTE Era」(写真5、関連記事)をMWCの展示会場で見ることができる。
そのほかNVIDIAによると中国Tianyu Communication Equipmentの「K-Touch Treasure V8」(写真6)がTegra 3を搭載している。また、スマートフォンではないが、NVIDIAのブースではTegra 3搭載機として、未発表の東芝製7.7インチディスプレイのタブレットを展示・デモしていた(写真7)。
米NVIDIAのDirector of Product Marketing TegraのMatt Wuebbling氏(写真8)は、Tegra 3がスマートフォンに搭載されるようになった背景として、ゲームなど処理能力の高さが求められるアプリが利用されるようになっただけでなく、Tegra 3の「4-PLUS-1」アーキテクチャが寄与しているという。4-PLUS-1とはTegra 3が4つのコアに加え、コンパニオンコアと呼ぶ5番目の低消費電力のコアを搭載していることを表す。性能が求められない処理に関してはコンパニオンコアが実行することで電力消費を抑えるようになっている。
また、Wuebbling氏は、現行のTegra 3の改良版であるTegra 3+搭載製品が「2012年後半には出てくる」と述べた。現行のTegra 3は製造プロセスが40nmである。Tegra 3+は製造プロセスが28nmになることが期待されるが、その点について同氏は明言を避けた。さらに2012年中には、Tegra 3とLTEのベースバンドチップを一体化したソリューションを提供すると説明、同社と米GCT Semiconductorおよびルネサスエレクトロニクスの子会社であるRenesas Mobileが共同で開発する(2月24日に発表済み)。なお、富士通がデモ展示しているLTE対応Tegra 3搭載スマートフォンのベースバンドチップは富士通の自社開発だという。