写真1●1月25日に発生したトラブルについて、1月26日午前に会見するNTTドコモの岩崎文夫 取締役 常務 執行役員(左)
写真1●1月25日に発生したトラブルについて、1月26日午前に会見するNTTドコモの岩崎文夫 取締役 常務 執行役員(左)
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 NTTドコモの大規模な通信障害が相次いでる。昨年から今年にかけて、スマートフォンに関連する大規模な通信障害だけでも4件発生。1月25日にも東京都内で最大で252万人がつながりにくくなるトラブルが起きたばかりだ(写真1、関連記事12)。事態を重く見た総務省は、これら一連のトラブルに対して再発防止策を取るように行政指導を行った。

 実はそれぞれトラブルの原因となった箇所はバラバラである。昨年12月末の障害は、spモードシステム内サーバーの輻輳を契機に表面化したIPアドレス払い出しシーケンスの設計ミスに起因(関連記事、詳報を日経コミュニケーション2月号に掲載)。今年1月1日のトラブルは、spモードシステム内のサーバーの故障。1月25日のトラブルは、切り替えたばかりの携帯コア網内のパケット交換機の制御信号容量の見積もりが甘かったことが原因だ(関連記事)。

 原因はそれぞれ異なるが、スマートフォン時代に入りインフラの運用がこれまでの常識からガラリと変わっているにもかかわらず、ドコモの対応が後手後手に回っていることが、これらすべての背景にあると考えられる。

ささいなトラブルでバーストトラフィックを誘引するスマートフォン

 まずスマートフォンによって大きく変化したのは、パケット網への端末の常時接続が当たり前となったことだ。これによってネットワークのどこかでささいな障害が発生しただけでも、圏内にいるスマートフォンが同時に一斉にネットワークに対して再接続を要求する。「スマートフォン時代に入ってささいなミスからバースト的なトラフィックを誘引しやすい状況になりつつある」(同社の岩崎文夫 取締役 常務 執行役員)。一度つながらない状況になると、再接続要求が繰り返され、さらにトラフィックが雪崩のように膨れ上がっていくわけだ。

 これまでのフィーチャーフォンでは、iモードなどのパケット網への接続は都度接続の形態だった。「iボタン」を押さなければパケット通信が始まらず、ネットワーク側で障害が発生した場合も、端末が一斉に再接続してくるようなケースは起きなかった。つまり、これまでは小規模なトラブルで済んでいたような事象でも、スマートフォン時代は結果的に大規模障害を引き起こしやすい環境に変わったと言える。

 実際、昨年8月に発生した障害も、spモードシステム内のスイッチが故障し、多数のスマートフォンが一斉に再接続した際に、認証サーバーが輻輳したことが原因である(関連記事)。このようなバーストトラフィックを発生させやすいスマートフォンに対して、インフラ側の能力が十分に対応できていなかった点が、ドコモでトラブルが相次いでいる一つの背景と言える。