写真●ICTタスクフォース「政策決定プラットフォーム」の第2回会合の様子
写真●ICTタスクフォース「政策決定プラットフォーム」の第2回会合の様子
[画像のクリックで拡大表示]

 総務省は2010年4月1日,グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース(ICTタスクフォース)の「政策決定プラットフォーム」第2回会合を開催した(写真)。政策決定プラットフォームとは,ICTタスクフォースの四つの部会の座長,副座長と,総務大臣,副大臣,大臣政務官の政務三役で構成する政策決定を担う最高機関である。第2回となる今回の政策決定プラットフォームでは,直近の各部会の検討状況の報告がメインとなった。

 ICTタスクフォースの各部会である「過去の競争政策のレビュー部会」「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」では,3月9日に原口一博総務大臣が指示を出した2015年までにブロードバンド・サービスを全世帯に普及させるとした「光の道」構想(関連記事)の実現に向けて議論が始まっている。3月29日に開催された両部会の合同会合では構成員から「光の道の定義をしっかりと行う必要があるのではないか」「具体的に何Mビット/秒以上なのか」といった意見が出されている(関連記事)。部会の状況を報告した過去の競争政策のレビュー部会の座長の黒川和美・法政大学教授は「政策決定プラットフォームで,ある程度“光の道”の定義や範囲を示してほしい」と語った。ただ今回の会合では,これまで原口大臣が述べてきた「“光の道”とはFTTHだけではなく無線アクセスを含む」という考え方を示すにとどまった。

 そのため「光の道」の実現に向けては,前述の3月29日の会合で設置が決まった「光の道」整備の在り方検討作業チームに多くの部分が委ねられた形になる。同チームは過去の競争政策のレビュー部会の副座長を務める相田仁・東京大学大学院工学系研究科教授が主査を務め,過去の競争政策のレビュー部会と電気通信市場の環境変化への対応検討部会の構成員を務める野村総合研究所の北俊一氏,九州大学大学院の篠崎彰彦氏とA.T.カーニーの吉川尚宏氏の4人で構成する。

 政策決定プラットフォームに出席した同チームの主査である相田教授は,議論の進め方について「まずブロードバンドの定義をどうするのかが悩ましい問題」とする。またブロードバンドの100%普及については,最低限,数Mビット/秒のブロードバンドを100%普及させることと,数十Mビット/秒以上の超高速のブロードバンドを広げることを,2段階に分けて考えてもよいのではないかとした。

 ブロードバンド・サービスを全世帯に普及させると考えた場合,現在加入電話に適用されているユニバーサル・サービスをブロードバンドに拡張するための制度設計も必要になる。ただ相田教授はブロードバンド・サービスの場合,ユニバーサル・サービスの定義との間にギャップが生じることについても触れた。

 ユニバーサル・サービスは「全国あまねく」「均一」という理念であり,例えば現在NTTグループにユニバーサル・サービスとして課されている加入電話の場合,どんな山間部や離島でも電話を引きたいユーザーがいれば引かなければならない。「全国あまねく」というエリア・カバーの考え方で運用されている。一方で現在のブロードバンド・サービスは,サービスが利用可能である市町村の人口をベースにした人口カバー率という考え方で設計されており,ユニバーサル・サービスとはエリアの考え方が根本的に異なる。また料金についても「競争が進んでブロードバンド・サービスが低廉化している中で,全国均一料金にすることがよいのか」(相田教授)とし,同作業チームでは,まずこれらの問題について整理していく考えを示した。

 「光の道」の実現方法と共に,5月中旬までに一定の方向性を打ち出すよう原口大臣に指示されたNTTの経営形態については,「順次議論を進めていく。5月中旬の段階では,いくつかのオプションが考えられるところまでいければ」(相田教授)とした。

 作業チームは4月2日に第1回の会合を開催する予定。5月までに週に1度のペースで議論を進めるという。なお作業チームの会合は非公開となるもようだ。

[「政策決定プラットフォーム」のページ]