図●ICTタスクフォース2部会合同会合の様子
図●ICTタスクフォース2部会合同会合の様子
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 総務省は2010年3月29日、グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース「過去の競争政策のレビュー部会」「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」第7回会合を2部会合同で開催した。今回は2015年までにブロードバンド・サービスを全世帯に普及させるという「光の道構想」について、議論すべき項目が示されるとともに、実際に議論を進めるワーキンググループの発足が報告された(本誌2010年3月29日号でWG発足を既報)。

 議論すべき項目として挙がったのが、「光の道の整備」と「国民の光の道へのアクセス権の保障」についてである。例えば「光の道の整備」では、(1)光の道として整備すべきインフラは何か、(2)独立した整備主体が必要なのか、ケーブルテレビ事業者や電力系事業者など他のインフラ系事業者との設備競争環境はどう確保するか、(3)ブロードバンドを敷設するのに採算が合わない地域には政府支援が必要なのか、(4)インフラ整備と公正競争環境の確保は一体で議論すべきかといった項目である。

 この項目の中で慶応義塾大学大学院の岸博幸氏は、「光の道とは光ファイバーを指すのかどうか、定義をはっきりしてほしい」という要望を出した。これに対し、総務副大臣の内藤正光氏は、「光の道というのは象徴的な言葉として使っているものであり、光ファイバーに限定してはいない。無線通信など様々な手段があっていい」と回答した。また、整備主体の議論で出てくると見られるNTTの経営形態については、「NTTの組織論という大きな話を扱うには回数が足らないのではないか」(経済ジャーナリストの町田徹氏)といった意見が出た。

 もう一つの議論項目である「国民の光の道へのアクセス権の保障」は、ユニバーサルサービス制度のあり方が対象となっている。具体的には(1)光の道構想が実現して国民がFTTHなどのブロードバンドサービスを利用できる状況になった場合のアクセス権を保障するために、ユニバーサルサービス制度はどうあるべきか、(2)整備までの過渡期において、ユニバーサルサービス制度はどのような見直しが必要か、といったものである。

 これらの項目を議論するワーキンググループには、「過去の競争政策のレビュー部会」から東京大学大学院の相田仁氏と野村総合研究所の北俊一氏、「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」から九州大学大学院の篠崎彰彦氏とA.T.カーニーの吉川尚宏氏がそれぞれ選ばれた。主査は相田氏が務める。過去の競争政策のレビュー部会の座長である法政大学大学院の黒川和美氏は、両部会の傘下で発足するWGについて「原口総務大臣から、光の道構想実現に向けてかなり突っ込んだ具体案を出すように要望されている」と語った。

 ワーキンググループではこの4人で議論を重ね、2010年5月中旬までに基本的な方針を打ち出す方針である。議論の内容は、5月までに3回開催する予定である部会で報告される方針である。また町田氏から、「通信事業者にあらためてヒアリングする機会を設けてほしい」という提案が出たことから、部会でのヒアリング実施を検討する方向となった。