2009年10月30日に発足したタスクフォースのうち,三つ目の部会である「国際競争力強化検討部会」では,新たな雇用と需要創出のために,ICT産業全般の国際競争力強化に向けた検討を進める。「コンテンツ事業者やメーカーなどを含む幅広いICT関連企業によるオールジャパン体制でのグローバル展開を促進する策」「地上デジタル放送日伯方式のさらなる国際的な普及などに向けた方策」「研究開発をはじめとするイノベーションの促進策」「デファクトスタンダードを含む標準化戦略の在り方」「著作権などの知的財産保護の在り方を含むコンテンツ産業の振興策」をテーマに挙げた。

 国際競争力強化検討部会の構成員の主な発言は以下の通りである。

NTT 代表取締役社長 三浦惺氏「教育や環境などの課題克服がICTの使命」
 医療や介護,教育,環境など日本の課題は多い。しかしそれを克服するのがICTの使命だと思う。そこで生まれたサービス・モデルがアジアを始めとする海外に展開していくべき。我々ベンダーだけでなく,アジアのためにもなる。

ソフトバンク 代表取締役社長 孫正義氏「国際競争力のためには教育機会の均等」
 日本がもう一度中長期の成長戦略を描き国際競争力を付けるには,日本国民の生産性を向上しなくてはならない。そのためにはICTを活用して山間部でも離島でも等しく最先端の教育を受ける機会を設けるべきだ。このような情報アクセス権を基本的人権に加えるべきだと考えている。

NEC 代表取締役執行役員社長 矢野薫氏「ファイナンスが不可欠」
 中国は猛烈な勢いで自国の技術の標準化を外国に押し出している。日本も標準化を進めていくには,ファイナンスを付けるプロジェクトを推進する必要がある。中国はメーカーに対して非常に多額のファイナンスを付けている。欧州も同様で,驚くべきことにそのファイナンスを日本のメーカーが利用しているぐらいだ。クラウドという新しい時代に新たなビジネスモデルを生み出すのは,メーカー間ではなく政策競争になっている。

 最後の部会である「地球的課題検討部会」では,環境問題や医療問題など世界各国が直面している課題を克服するための方策を検討する。「ICTによる地域の絆を作る観点から,ICTの利活用を促進するための方策」「情報リテラシーの向上,チャレンジド(障がい者)によるICT利活用の促進などを図るための方策」「ICTの利活用により,世界中の人々が等しく恩恵を享受できるような方策」について話し合う。

 地球的課題検討部会の構成員の主な発言は以下の通りである。

慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究化 教授 金子郁容氏「日本は世界のリーダーになり得る」
 日本は世界最先端のブロードバンド大国であるが,一方で世界最大の社会課題を抱えた国でもある。少子高齢化や温暖化,低成長がその例である。しかしICTを活用してこうした社会課題を解決する糸口を見つけられれば,日本は世界のリーダーになり得る。

野村総合研究所 シニア・フェロー 村上輝康氏「ICTでユニバーサル・サービスを生み出すべき」
 日本は世界最先端のICT技術を持っているが,今後の宿題はユニバーサル・サービスを生み出せるかどうかだと考えている。高度なICTを使いながらも,高齢者やチャレンジドな方,ITに詳しくない方でも使えるサービスを生み出すべきである。

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