総務省は2009年10月30日,「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」の第1回会合を開催した。初回はタスクフォースを構成する四つの部会合同で開催し,タスクフォース全体の基本的な考え方と,各部会で今後検討する事項,委員によるフリーディスカッションが行われた。ここでは四つの部会のうち「過去の競争政策のレビュー部会」と「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」に関して行われた議論を紹介する。

 「過去の競争政策のレビュー部会」では,「これまでの四半世紀にわたる競争政策が,電気通信市場の公正競争促進や消費者の利便向上などにもたらした効果を検証/総括」することが検討事項として挙げられた。部会で座長を務める黒川和美法政大学教授は,「ICTという技術やサービスが全国民に等しく,誰もが自由に選択できる環境をきちっと確保しなければいけない」と所信を述べた。

 フリーディスカッションでは,経済評論家の勝間和代氏が「これまでのICTの議論はT(テクノロジー)に偏りすぎていた。もっとIとCの議論が重要。ICTの利活用が進めば,男女共同参画の推進や少子化対策に繋がる」と意見を述べた。岸博幸慶応大学教授は「コンテンツ,メディアは死にそう。デジタル技術が文化やジャーナリズムなど社会に不可欠な価値観を衰退させている。社会にとって大事な価値観を守るためにはどうすればいいか議論したい」とコメントした。また,経済ジャーナリストの町田徹氏は「ユニバーサル・サービスの対象やアンバンドル規制の対象が今のままでいいのか議論したい」と意見を述べた。

 「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」では,コンテンツ配信市場などの上位レイヤーも含めた国際市場において,わが国の電気通信事業者が活躍できるようにするため,これまでの電気通信市場の議論を越えたICT産業全体の将来像を描いた上で,「インターネットのオープン性の確保の在り方」「サイバーアタックへの対処を含めた安心・安全なインターネットの実現」「ユニバーサルサービスの在り方」「国民のコミュニケーションにおける権利保障のあり方」の4点が検討事項として示された。部会で座長を務める山内弘隆一橋大学教授は「放送と通信の融合,NTTのあり方といった課題がある中で,我々の議論をどう繋げていくか考えたい」と所信を述べた。

 フリーディスカッションでは,藤原洋インターネット総合研究所代表取締役所長が「インターネットとモバイルの垣根を取り払って議論する必要があるのではないか,エネルギー・フローをICTの枠組みに加える必要があるのではないか」とする意見を述べた。

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