2009年7月28日,情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会 接続委員会が開催され,NGN(次世代ネットワーク)におけるIPv6インターネット接続方式に関する接続約款変更案について,認可することが適当だとする調査結果が示された。これでNGNにおけるIPv6インターネット接続方式が事実上固まったことになる。今回の調査結果は,表現などの若干の変更を加えられた後,8月6日の電気通信事業部会で正式な答申となる予定である。

 今回の接続約款の変更案は,NTT東西が5月19日に申請した(関連記事)。IPv4アドレス枯渇に伴い,インターネット接続事業者(ISP)がNGNを利用してIPv6インターネット接続サービスを提供するための接続方式を接続約款に盛り込むためのものである。「トンネル方式」と「ネイティブ方式」の2方式が並立する内容となっている。

 今回の調査結果では,NTT東西の申請案がそのまま認可される格好となる。だが,2回にわたって寄せられた多数の意見(パブリック・コメント)を反映し,12もの要望事項が付記されるという異例の報告書案となった(関連記事)。具体的には,以下の措置が講じられることを要望すると報告書案で示された。

 ただし,以下の項目のうち,いくつかの内容については委員から変更すべきという意見が提示されたため,実際の答申では若干の変更が加えられる可能性がある。

(1) トンネル方式とネイティブ方式の提供開始時期の同等性を確保するように努める(NTT東西)
(2) トンネル方式にかかる利用者負担を軽減などに積極的に取り組む(NTT東西)
(3) トンネル方式において,ISP事業者の負担を軽減する観点から,網終端装置でIPv4接続とIPv6接続の双方が可能となる方策を検討する(NTT東西)
(4) 今後の技術の進展状況などを踏まえつつ,ネイティブ接続事業者の最大数をできる限り増加できるように検討する(NTT東西)
(5) NTT東西に対し,ネイティブ接続事業者の選定結果を申し込んだ事業者へ通知する前に,選定結果および当該選定が選定基準に基づいて行われた旨を示す書類を総務省に報告する(NTT東西)。当該報告に基づき,選定過程の公正性・適正性を検証する(総務省)
(6) 関係事業者からの具体的な要望などを踏まえ,過度の経済的負担などが生じない場合は,ネイティブ接続にかかる相互接続点の増設に向けて取り組む(NTT東西)
(7) ISP事業者の公正な競争環境下における事業展開を担保するためには,電気通信事業法の規定および接続約款におけるネイティブ接続事業者の責務規定が適正に運用される必要があることを考慮し,事業者間の競争環境などを注視しつつ,適時適切に対応する(総務省)
(8) NTT東西に対し,ネイティブ方式における網内折り返し通信に関し,違法情報については,これまでと同様,捜査機関からの要請に応じて犯罪捜査への協力などを実施するとともに,有害情報などについても,社会的要請に応じ,ネイティブ接続事業者などと連携しながら,適時適切に対応を行うように努める(NTT東西)
(9) NTT東西に対し,ネイティブ接続事業者から,自らDNSサーバーを設置したいとの要望が寄せられた場合は,その実現に向けて積極的に対応する(NTT東西)
(10) ネイティブ接続事業者に対し,ネイティブ接続事業者同士が合併などを行い,従来異なる事業者に帰属していたIPアドレス・ブロックが実質的に収斂することになる場合は,当該ネイティブ接続事事業者は,総務省に対しその旨を速やかに報告するとともに,IPアドレス・ブロックを一つに集約するように取り組む(ネイティブ接続事業者)。当該取り組み状況を注視しつつ,必要に応じ適切に対応する(総務省)
(11) NTT東西の子会社などがネイティブ接続事業者として選定された場合には,事業者間の競争環境などについて十分に注視し,電気通信事業法などの規定および接続約款におけるネイティブ接続事業者の責務規定に違反するおそれがある場合には,迅速かつ厳正に対処する(総務省)
(12) 今後も,利害関係者であるISP事業者の理解が得られるように必要な情報を積極的に開示するとともに,システム開発などにかかる事業者間協議が円滑に行われるように努める(NTT東西)

 当日の委員会では,「日本のインターネットや固定ブロードバンドのあり方を決めることになるため,拙速ではなくて,もっとじっくり議論する時間をとって欲しかった」,「将来のISPやインターネットのあり方を議論するため,ほかの委員会やパブリック・ヒアリングなどの場があった方が良かった」といった感想も委員から聞かれた。