「わずか1年半で,Ciscoはコンシューマ企業への変貌を遂げた。革新を実行に移せる企業体質がその原動力だ」。2009年1月9日,家電展示会「2009 International CES」の基調講演に登壇した米Cisco Systems会長兼CEOのJohn Chambers氏(写真1)は,製品の革新性を前面に出した米Microsoftやソニーの基調講演に釘を刺すかのように,企業体質そのものを革新する重要性を訴えた。

 講演の冒頭にChambers氏は,「今日は会場参加型の講演にしたい」と宣言。会場全体をゆっくりと歩きながら「家電業界はこれからも持続的な成長が可能だ。なぜならネットワークというインフラが存在するからだ」と参加者を勇気付けると同時に,同分野の第一人者としての自信を見せた。

写真1●いつものように会場を歩き回るスタイルで講演する米Cisco Systems会長兼CEOのJohn Chambers氏
写真1●いつものように会場を歩き回るスタイルで講演する米Cisco Systems会長兼CEOのJohn Chambers氏
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写真2●遠隔医療ソリューション「Cisco HealthPresence」による遠隔診断を実施。インド在住の医師が参加
写真2●遠隔医療ソリューション「Cisco HealthPresence」による遠隔診断を実施。インド在住の医師が参加
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 ネットワークが革新のインフラとなる点を強調したChambers氏は,ネットワークとコンシューマの両分野に進出した成果を三つのデモで披露。遠隔医療ソリューション「Cisco HealthPresence」(写真2),SNSプラットフォーム・サービス「Cisco Eos」(写真3),DLNA対応の家庭向けNAS「Linksys by Cisco Media Hub」(写真4)をそれぞれ紹介した。デモの内容自体は,家電業界から見ればさほど目新しさがない内容と言える。とはいえ,家電市場への参入表明から2年もせずに同じ土俵に上がってきた“挑戦者”に向け,会場からは惜しみない拍手が送られていた。

写真3●SNSプラットフォーム・サービス「Cisco Eos」。Warner Music Groupがアーチストのプロモーションに採用
写真3●SNSプラットフォーム・サービス「Cisco Eos」。Warner Music Groupがアーチストのプロモーションに採用
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写真4●DLNA対応の家庭向けNAS「Linksys by Cisco Media Hub」のコンテンツをネットワーク越しにXbox 360から視聴
写真4●DLNA対応の家庭向けNAS「Linksys by Cisco Media Hub」のコンテンツをネットワーク越しに視聴
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写真5●Ciscoの社内版“YouTube”「C-Vison」に投稿されたコンテンツ数の推移。11カ月で投稿数は19倍に
写真5●Ciscoの社内版“YouTube”「C-Vison」に投稿されたコンテンツ数の推移。11カ月で投稿数は19倍に
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 同社はこれらコンシューマ市場への参入を成功させるために,社内でのソーシャル・サービスの利用を促進。Wikiは約19万ページ,ブログは約1万エントリー,社内版“YouTube”の「C-Vison」は約5000のコンテンツが投稿されているという(写真5)。

 講演の終わりにChambers氏は,「経済情勢の話には触れない。なぜなら1993年,1997年,2001年,そして2003年と,不況と呼ばれる時期でもCiscoは業績を伸ばし続けてきたからだ」とし,CES前夜のMicrosoft Steve Balmmer社長,同2日目のソニーHoward Stringer会長兼CEOが語った「製品の革新」(関連記事1関連記事2)を生み出す土壌となる「企業の革新」を訴え講演を締めくくった。