総務省は2008年10月27日,情報通信審議会 情報通信技術分科会 携帯電話等周波数有効利用方策委員会の第32回会合を開催した。会合では,3.9世代(3.9G)移動通信システム導入(関連記事)に向けた技術的方策案を含む報告書案を提示。3.9Gシステムの技術的条件をほぼ固めた。

 報告書案では,3.9Gシステムの技術方式としてLTE(long term evolution)とUMB(ultra mobile broadband)を明記。さらに3.5世代移動通信システムを高度化した,2×2 MIMOを採用する下り最大約44Mビット/秒のHSPA Evolution(フェーズ2)と,5MHz幅の帯域を重ね合わせて下り最大約44Mビット/秒を実現するDC-HSDPAを併記した(関連記事)。これら4方式を,3.9Gシステムの技術的条件として示した形になる。

 一方で,3.9Gシステムとして検討の希望があったモバイルWiMAX(FDD)については,委員会で検討対象としている800MHz帯,1.5GHz帯,1.7GHz帯,2GHz帯に対応した標準プロファイルが現段階では存在しないとして,技術的条件には含めなかった。ただしシステム間の干渉などを調査する共用条件としては,将来的に対応可能なシステムであることから,モバイルWiMAX(FDD)を含めた形にしている。3.9Gシステムと他のシステム間の共用条件としては,それぞれのシステムはいずれの帯域においても導入可能との結論を示した。

1.5GHz帯デジタルMCAを3.9Gシステム向けに転用

 報告書案のもう一つポイントと言えるのが1.5GHz帯の扱いだ。この帯域は,NTTドコモ,KDDI(旧ツーカー),ソフトバンクモバイルが第2世代携帯電話(PDC)向けに利用してきたが,2010年3月までに利用を終える予定になっている。総務省はかねてから,上下それぞれで25MHz幅が空く予定の1.5GHz帯を,3.9Gシステム向け追加割り当て帯域として活用する意向を示してきた。

 今回の報告書案ではさらに一歩踏み込み,1.5GHz帯デジタルMCAの帯域も「3.9Gシステムを導入可能にすることが望ましい」と記した。

 デジタルMCAが1.5GHz帯で利用している帯域幅は,上下それぞれで約12MHz幅ある。隣接する検討帯域を含めると1.5GHz帯は,ガードバンドを含めて合計で上下それぞれ48MHz~49MHz幅を3.9G向けに転用する見込みとなった。これによって3.9Gシステム向けに1.5GHz帯の周波数追加割り当てを,3社で分配するプランも現実味を帯びてきた。

 なお報告書案では,2010年ころに,まずは可能な地域から1.5GHz帯に3.9Gシステムを導入。2010~2019年の間の半ばころに全国拡大すると共に,1.5GHz帯の利用帯域をスケーラブルに増やすという2段階に分けた導入プランを示している。

年明けに免許方針案を策定,2009年春にも免許申請

 総務省では今回の報告書案を,10月31日から1カ月間にわたって意見募集にかける。その後,取りまとめに入り,12月に答申を得る計画。総務省は並行して,3.9Gシステムの免許方針案の策定にも取り掛かる。策定に当たっては,参入を希望する事業者の意見を聴取する場として,公開ヒアリングを11月7日に開催する。ここで事業者から計画するシステムやサービス内容,割り当て希望する周波数幅,事業者の選定要件,競合が生じた場合の選定基準などをヒアリングし,免許方針案の参考とする。

 その後,2009年初めにも3.9Gシステムの免許方針案を策定し,意見募集や電波監理審議会への諮問・答申を進める。2009年春ころに免許申請を受け付け,参入事業者を決定。2010年春以降の3.9Gシステムの商用サービス開始へつなげる意向だ。

 このような総務省の動きをふまえて,3.9Gシステム向けた各携帯電話事業者の周波数争奪戦が今後加熱していきそうだ。

■変更履歴
記事掲載当初,1.5GHz帯デジタルMCAの終了予定時期を記述していましたが,実際は未定のため記述を削除しました。また,3.9Gシステムの全国拡大時期は,正しくは「2010~2019年の間の半ばころに」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/10/27 22:30]