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 東京証券取引所は7月22日午後3時半から緊急会見を開き、同日午前に発生した派生売買システムの障害について説明した(関連記事1関連記事2)。説明に当たった鈴木義伯常務取締役CIO(最高情報責任者=写真)によると「プログラムが使用するメモリー領域の設定ミスにより、取引の注文状況を表示する板の情報が配信できなくなった」という。ベンダーである富士通の作業ミスをテストでも発見できなかった。

 板情報を配信するプログラムは本来、1銘柄当たり1280バイトの作業用メモリー領域を2万8000銘柄分、合計3万5000Kバイト確保するよう記述しなければならない。だが、1銘柄当たりのメモリー領域を誤って4バイトとしてしまったため、プログラムは本来の320分の1の109.375Kバイトしか確保しなかった。結果として89銘柄以上の板情報の問い合わせが同時に発生すると、作業用メモリーが足りなくなり、情報配信システムがダウンした。

 19日からの3連休を利用してプログラムのバージョンアップを実施した際にミスは起こった。現在2秒おきに配信している板情報の配信間隔を、将来的により短い間隔に変更するための作業だったが、新しいプログラムに設定ミスがあった。バージョンアップ後最初に市場が開いた22日午前に障害が発生した。

 鈴木CIOは「設定をミスしたのはベンダーの富士通」とした上で、「多数の銘柄に対し板情報の問い合わせがあった場合をテストケースに含んでいなかったのは我々の責任。もっと幅広くテストすべきだった」と陳謝した。

 現在、派生売買システムで扱っている銘柄数は約2万銘柄。板情報を配信するシステムは、今後の銘柄増を見越し2万8000銘柄まで対応可能となっている。だが「そのほとんどが株式のオプションであり、取引頻度はあまり高くない。板情報の問い合わせがあるのは通常数100銘柄程度」(東証広報)だった。そのためか多数の銘柄に対応したテストケースを用意しておらず、20日に取引参加者を交えて実施したテストでもミスを発見できなかった。

 板情報を配信するプログラムが動くゲートウエイサーバーは計6台。22日午前は、午前9時の立会取引が始まる前の寄付き時点で問い合わせ銘柄数が89を超えた3台がダウン。午前9時の取引開始直後にそれ以外の2台のパフォーマンスが極度に低下した。午前9時15分頃まで最後に残った1台のパフォーマンスも低下したため、午前9時21分から派生商品の立会取引を停止した。

 証券会社は6台のいずれかのサーバーに接続し、板情報を問い合わせる。証券会社によっては複数の回線を使い、複数のサーバーに接続しているケースもある。このためサーバーごとに板情報の問い合わせ銘柄数に違いが生じ、サーバーのパフォーマンスが低下したタイミングもズレた。

 東証がシステム障害で取引に支障を来したのは、今年に入って3回目。度重なる障害に東証の鈴木CIOは「バグを減らす努力をすると同時に、障害が発生してからすぐに対応する体制作りも必要」と力説した。「現在はシステム障害が起きたら原因が判明するまでシステムを停止する決まりになっている。今後は、障害の兆候があったら、その部分除去して取引を続けられるようにしなくてはいけない」という。