米Microsoftは2008年7月第3週,クラウド・コンピューティング・サービス「Live Mesh」のプレリリース版を米国の一般ユーザー向けに初めて公開した(関連記事:Microsoft,クラウド・サービス「Live Mesh」の技術プレビュー版を米国ユーザーに公開)。これによって,試験運用の参加者が一気に増える。同サービスを利用すると,パソコンや各種デバイス,Webデスクトップ間でファイルを同期できるほか,パソコンの遠隔操作もできる。これまで同社は,対象を限定したテストを行っていた。

 Live Meshによって,WindowsパソコンやMacintosh,様々なモバイル端末,Webデスクトップを相互接続させた「メッシュ」が作れる(現在のプレリリース版は,WindowsパソコンとWebデスクトップにしか対応していない)。メッシュに参加する全デバイス間で,フォルダとフォルダ内のデータの同期が行える。その結果,時間や場所を問わず自分のデータにアクセスできるのだ。Live Meshはパソコン用の遠隔操作機能も備えており,外出中でもインターネット越しに自宅のパソコンを使える。

 そもそもLive Meshとほかの類似サービスの相違点は,Microsoftが目指している最終目標にある。同社は,広範なクラウド・コンピューティング・プラットフォームが将来Windowsのライバルになると考えており,こうしたプラットフォームを実現するつもりだ。同社は2008年10月に開催する開発者会議「Professional Developers Conference 2008(PDC08)」で,Live Meshプラットフォーム上で動くアプリケーションとサービスの開発に必要なインタフェースとツールを発表する(関連記事:Microsoftが10月開催「PDC08」の概要を予告,クラウドを連呼)。Live Meshで提供するサービスも徐々に拡充させるという。

 少数のテスター向け初公開となった2008年4月以降,Live Meshに施された機能強化はごくわずかだ。一例を挙げると,PtoP方式のファイル同期モードが追加された。このモードを使えば,Webデスクトップを介さず,ベータ版Live Meshの最大5Gバイトというストレージ容量に制限されることなく,好きなだけ大量のデータを同期できる。機能強化のペースは遅いが,無料サービスということを考えるとLive Meshは現在のままでも十分すばらしい。Live Meshの詳細については,SuperSite for Windowsに掲載した筆者の記事「Live Mesh Preview(Part One:Introduction)」(英文)を読んでいただきたい。

 Live Meshを取り上げた記事の中には,米Appleの精彩を欠いたバグだらけのサービス「MobileMe」と比べたものもあるが,この比較は不適切だ(関連記事:Apple,「MobileMe」への移行トラブルでアカウントを30日間延長【WWDC】Appleも「クラウド」へ,Exchange Server互換サービス「MobileMe」を提供)。両サービスは,どちらもクラウド・コンピューティングをマーケティングしているというだけで,それ以外の共通点はほとんどない。MobileMeは主に「iPhone」を対象とするサービスで,住所録やスケジュールなどのPersonal Information Manager(PIM)データとメール・メッセージを一括して交換するためのものだ。一方Live Meshはプラットフォームそのもので,現在はストレージ同期を主要機能としている。つまり,近いうちにLive Mesh上でMobileMe的なサービスはいくらでも開発できるようになる。しかし,その逆は無理だ。

 Live Meshの技術プレビュー版は,「Windows Live ID」でWebサイトにログインすれば試用できる。