米Microsoftは,米Googleに膨大な収益をもたらしているオンライン広告分野で失敗する可能性があるにもかかわらず,最終的には自社の広告事業が成り立つという考えに固執している。Microsoftは2008年5月第4週,ワシントン州レドモンドの本社で開催したイベント「advance08 Advertising Leadership Forum」の場で,2007年に行ったWeb/モバイル/ゲーム広告向け取り組みの内容を紹介し,こうした姿勢を示した。それによると,同社は広告に関する「ワンストップ店舗」を開店し,ライバル企業が太刀打ちできない魅力的な品揃えを用意しているという。

 Microsoft広告主/メディア向けソリューション担当上級副社長のBrian McAndrews氏は,「当社が広告主/広告代理店/メディアに提供しているすべてのツールとソリューションを一つにまとめ,『Microsoft Advertising』という新たなブランドに統合した」と述べる。「この新ブランドは,当社が複雑な環境の活用に注力していることと,必要な要素を漏れなく一括して提供できることを顧客に知ってもらえるよう作った」(McAndrews氏)。

 同社が新たに行う広告関連の取り組みは以下の通りである。

・広告効果測定サービス「Engagement Mapping」:オンライン広告がクリックされたという情報だけでなく,より詳細なデータを広告主に提供することで,消費者のオンライン購入習慣を詳しく調べられるようにする。

・モバイル広告:Microsoftは現行および次世代のスマートフォン向け「リッチメディア広告」を手がけている。この種の広告は通常モバイル機器向けWebサイトに掲載されるが,同社はインスタント・メッセージング(IM)サービス「Windows Live Messenger」とメール・サービス「Windows Live Hotmail」のクライアント・ソフトウエアにも表示させる。さらに,携帯用メディア・プレーヤ「Zune」向け広告システムの試作版も紹介した。

・ゲーム内広告:以前からゲームの世界では,テレビ業界と同様,映像内に商品を入れる間接広告手法を採用してきた。これに対し,Microsoftはゲームをプレイする際のじゃまにならないような広告挿入方法を広告主とともに検討中だ。同社は先ごろスナック菓子「Doritos」がテーマのゲーム開発コンテストを開催し,数千件の応募があったという。

 さらに,Microsoftは出遅れた検索サービス「Live Search」を活性化させるため,ユーザー向けキャッシュバック・プログラムを開始する(関連記事:Microsoft,「Live Search」利用者を対象にキャッシュバック・プログラムを開始)。同社がこうしたてこ入れ策を実施するのは初めてではなく,3年前にも同様のプログラムを実施した。

 今回の「Live Search cashback」プログラムでは,Live Searchで特定商品を見つけたユーザーが実際に購入すると,少額の払い戻しを受けられる。ただし,米国のみを対象とするプログラムである。なお,同プログラムは,同社が2007年10月に買収したオンライン・ショッピング検索サイト「Jellyfish.com」の仕組みを利用している(関連記事:Microsoft,オンライン・ショッピング検索エンジンのJellyfish.comを買収)。

 Microsoftはadvance08の場で米Yahoo!に関しては何も明言しなかった。低迷中のインターネット大手企業であるYahoo!との交渉を突如再開したので,全く見通しが立たないのだろう。MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏は出張先のイスラエルで,「現在行っているYahoo!との交渉内容は,買収を持ちかけた最初の条件と完全に異なる」と述べた。「Yahoo!を買収するつもりはない。価値を生み出すであろう提携について交渉したいだけで,Yahoo!を丸ごと買うことなど考えていない」(Ballmer氏)。