米Googleは2008年3月第4週,米連邦通信委員会(FCC)あての書簡のなかで,米国の地上デジタル・テレビ放送で使われない免許不要の周波数帯「ホワイト・スペース」を無線ブロードバンド・インターネット接続サービス用として開放するようFCCに求めた。ホワイト・スペースは現行テレビの2~51チャンネルに相当する周波数帯に存在しており,米国のテレビ放送の全面デジタル化にともなって使用されなくなる。

 GoogleはFCCに送った書簡のなかで,「以前から指摘しているように,米国で利用可能な周波数帯の大部分がまったく使われなくなるか,無駄に使われるようになる」とした。「電波はあまりにも貴重なリソースなので,無駄にしてはならない。この機会を逃したら,米国の全国民に無線ブロードバンド接続サービスを提供することなど二度と実現できなくなる」(Googleの書簡)。

 米国政府にホワイト・スペースのインターネット接続サービス向け開放を陳情しているのは,Googleだけでない。ソフトウエア大手の米Microsoftや,米Dell,米Intelも同様の主張をしている。ただし,このところGoogleはホワイト・スペース開放にとても積極的で,政府や軍から要求された際には周波数帯を開放する計画まで提案した(関連記事:GoogleやMSなど,700MHz帯の無線ブロードバンド・サービス利用をFCCに働きかけ)。

 先ごろFCCはこの周波数帯のオークションを実施したが,Googleが2007年に行った申し立ての影響で,周波数帯の利用開放規定が条件に盛り込まれていた。オークションで落札に成功したのは,米Verizon Wireless,米AT&T,英Vodafoneといった通信大手である(関連記事:米国の700MHz帯オークション,注目のCブロックはVerizonが落札)。しかし,Googleの働きかけにより,これら通信会社は獲得した周波数帯をライバルの通信機器にも使わせることになる。

 Googleは今回のオークションで直接的なメリットを得ていないように見えるが,そのようなことはない。当然Googleは自分たちの利益ばかり考えている。まず,周波数帯開放が利益につながるスマートフォン向け新ソフトウエア基盤「Android」のお膳立てができた。さらに,現在Googleの収益の柱はオンライン広告販売事業なのだ。オンライン広告市場の拡大は,Googleの利益になる。