米Yahoo!は,2008年2月27日(米国時間)に米証券取引委員会(SEC)に提出した年次報告書で「米Microsoftが提示した446億ドルの敵対的買収活動で経営に悪影響が出た」との見解を示した。Microsoftの買収提案に対して,Yahoo!の取締役会は初めに拒否する構えを見せた(関連記事:「著しい過小評価」,Yahoo!がMicrosoftの買収提案を拒否)が,取締役会で混乱が生じ,有能な従業員の引き留めが困難となり,株主を動揺させ,広告主が広告掲載に二の足を踏んでいるとしている。

 その間に,Yahoo!は7件の株主訴訟に直面することになった。これらはいずれも,Yahoo!がMicrosoftの買収提案を受け入れないことで株主が損害を被ったと申し立てている。

 Yahoo!は同報告書の中で「Microsoftの一方的な買収提案によってYahoo!の経営幹部に動揺が生じており,不確定ながら当社の経営に悪影響を及ぼす可能性がある」とした上で,今回の買収提案における最良のシナリオと最悪のシナリオを想定している。最良のシナリオは,Yahoo!の経営幹部に動揺が生じていることから,相当の時間と手間をかけてMicrosoftの買収提案やその他のライバルが提示した代替案を評価するよう経営幹部に求めること,最悪のシナリオは,Microsoftの買収提案が従業員の大量流出や広告主の契約解除につながることだという。

 当然のことながら,Yahoo!は今回のような事態が,市場リーダーの米Googleとの戦いに破れた過去数年間での,自らの経営上の失策が一因であることをあまり述べていない。さらに,Yahoo!の株主の大半は,Yahoo!がMicrosoftの買収提案を拒否する決定を下したことにあまり反応していない。Yahoo!は現在7件の株主訴訟(うち4件はカリフォルニア州,3件はデラウェア州)に直面しており,これらの訴訟ではYahoo!がMicrosoftとの交渉を行わないことで株主の要求が無視されたと主張している(関連記事:「MSは買収を成立させたいなら価格を引き上げるべきだ」,Yahoo!の第2位株主)。Microsoftが提示した446億ドルは,Yahoo!の当時の株価を62%上回るものだった。

 Microsoftは提示価格の引き上げを拒否し,代わりにYahoo!の取締役員を締め出す作戦に出た。この作戦の決戦日は,Yahoo!の新たな取締役員選出の開示期限にあたる3月14日だ(関連記事:ついに開戦! MicrosoftがYahoo!株主の委任状獲得に乗り出す)。