米Microsoftは,インターネット大手の米Yahoo!に対する敵対的買収活動で戦争状態(デフコン1)へ移行した。株主の委任状獲得を請け負う業者と契約し,Yahoo!の現取締役会を追い出そうとしているのだ。委任状争奪戦は,MicrosoftがYahoo!買収に取り組み始めた当時,危険な賭と考えられた。しかし,Yahoo!の取締役会に満場一致で446億ドルもの買収提案を拒否されたとなると,Microsoftは残された選択肢が限られると感じたはずだ。

 MicrosoftがこのタイミングでYahoo!取締役会の退陣を図ったのは,たまたまではない。現在の取締役は,全員が2008年3月の再選を目指している。そのため,Microsoftは,現取締役を辞任させ,当初条件で買収を受け入れる取締役の選出に十分な同意をYahoo!の主要株主から取り付けられると踏んだのだろう。

 委任状争奪戦には危険がともなう。現在の取締役を追い出すと,Yahoo!の重要な技術者や幹部にも会社を去られかねないのだ。ただし,買収金額を引き上げるよりずっと少ない出費で済む。業界アナリストは,Microsoftが委任状争奪戦につぎ込む資金を2000万~3000万ドルとみている。これに対し,買収金額を1株当たり1ドル上げると,そのたびに14億ドル支払う必要が生じてしまう。Microsoftの会長であるBill Gates氏は2月第3週,「買収金額を上げるつもりはない」と発言した。

 もっとも,Yahoo!の重要な社員を引き留める効果が期待できるので,Microsoftには買収金額を引き上げる道も残っている。「取締役会を転覆するぞ」という脅しは,「Microsoftが本気で買収に取り組んでおり,Yahoo!は拒否できない」ことをYahoo!に理解させるのに十分だろう。Microsoftは「Yahoo!に残る主な技術者と幹部社員へ有利な条件を提示する」と公式に表明した。しかし,合併後に実施するであろう人員削減の規模には触れていない。

 一方Yahoo!は,Microsoftによる買収に備え,従業員を守るための契約解除計画を新たに導入した。従業員の職種に応じて,最長2年のあいだ解雇手当を支給するとしている。