写真1●あらめて光ファイバの1分岐貸しを主張するソフトバンクの孫正義代表取締役社長
写真1●あらめて光ファイバの1分岐貸しを主張するソフトバンクの孫正義代表取締役社長
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 「われわれは携帯電話を一生懸命やっているからブロードバンドにまで金が回らなかった。正直ちょっと手が緩んでいた。その隙(すき)に何が起きたか」。ソフトバンクの孫正義代表取締役社長(写真1)は2008年1月23日,自身が代表理事を務めるブロードバンド推進協議会の賀詞交歓会冒頭の講演で,出席者にこう投げかけた。続けて,何が起きたかを次のように述べた。「初めて光ファイバのサービスの値上げがあったんです。考えられますか」。

 孫社長が言う“値上げ”とは,2007年4月~7月にかけて,大手プロバイダ各社が集合住宅向けFTTHサービスの月額料金を値上げしたことを指す(関連記事1関連記事2関連記事3関連記事4)。値上げの背景として孫社長は,FTTH市場における事業者間競争のあり方を挙げた。「われわれが携帯電話で忙しい間に競争が緩み,NTT東西の光ファイバ・サービスのシェアが7割を超えた。こういう寡占化の下で値上げになった。これが競争しないことの弊害だ」と訴えた。

政治家を前に改めて1分岐貸しを主張

 孫社長が言う競争とは,事業者自らが光ファイバを敷設する「設備競争」ではなく,NTT東西が既に持っている設備を借り受けた上で,FTTHを各事業者が提供する「サービス競争」のことである。NTT東西の設備は第一種指定電気通信設備として他社が借りる際のルールが定められている。ただしソフトバンクは現行のルールのままでは事業者の競争は進まないとし,光ファイバを借りる際のルールの一部変更を主張している。

 ここで指す「光ファイバ」とは,「シェアドアクセス」と呼ぶNTT東西の加入者系光ファイバのこと。1心の光ファイバを局内スプリッタで4分岐し,局外スプリッタで8分岐している。この8分岐の先には,FTTHサービスを利用する各ユーザー宅がつながる。ただし現状は8分岐の先に必ずしも8ユーザーが接続しているわけではない。この一部が使われていない状態を問題視している。

 一部が“遊んでいる”状態になっている根本原因として,孫社長は現行の貸し出しルールを挙げる。現行のルールでは,局内スプリッタと局外スプリッタの間の光ファイバ単位,つまり8分岐相当分の単位でしか借りられない。1分岐だけを借りたい場合でも8分岐相当を借りる必要があり,コスト高になってしまう。ひいてはそれがユーザーの月額料金に反映されるため,今以上に安くFTTHを提供できず需要を喚起しきれていない。そのため分岐が埋まらず“遊んでいる”状態になる,というのだ。

 こうした現状を孫社長は,「ADSLのときは,お客さんを見つけるたびにメタル回線を1回線ずつ借り受けてサービスができた。光の場合は,お客さん一人見つけたら8分岐分まとめて借りなければならない」と説明する。

 この8分岐分を1分岐相当単位で貸し出して欲しいというのがソフトバンクの主張である(関連記事1関連記事2)。孫社長の賀詞交歓会での講演は当初10分程度の予定だったが,光ファイバの貸し出しの話に熱が入り,講演は約30分間続いた。この講演の中で孫社長は何度も1分岐貸しを認めて欲しいと訴えた。なお,こうした主張に対してNTT東西は強く反発している(関連記事)。

 賀詞交歓会には来賓として自由民主党から国会対策副委員長である岩屋毅代議士,国土交通副大臣である平井卓也代議士,党内でu-Japan特命委員会の幹事などを務める橋本岳代議士が出席。孫社長の主張に耳を傾けていた。

■変更履歴
賀詞交歓会の開催日を2008年1月21日としておりましたが、正しくは2008年1月23日です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/01/25 19:49]