米IBMとTDKは,スピン注入磁化反転法ベースの新型Magnetic RAM(MRAM)を共同で研究/開発する。両社が米国時間8月19日に明らかにしたもの。

 従来のメモリー素子が電荷を利用して情報を記憶するのに対し,MRAMは磁気を用いるメモリー。ハード・ディスク装置の読み書きヘッドにも使われるトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto Resistance)素子でメモリー・セルの磁化方向を変え,それに応じた電気抵抗値の変化で情報を表現する。

 電源を切っても情報維持が可能な不揮発性を備える。大容量で,書き換え/読み出しが高速,低消費電力という特徴もある。そのうえ,書き換え回数に制限がない(関連記事:次世代不揮発性メモリー(下))。

 IBMとTDKは,スピン注入磁化反転法を用いることで,MRAMの長所である低消費電力,書き換え回数無制限,不揮発性を維持しつつ,MRAMのセル・サイズを小さくし,経済的に全体のメモリー容量を増やせると見込む。

 両社の研究作業は,IBMのThomas J. Watson Research Center(ニューヨーク州ヨークタウンハイツ),Almaden Research Center(カリフォルニア州サンノゼ),ASIC Design Center(バーモント州バーリントン)と,カリフォルニア州ミルピータスにあるTDK子会社の研究開発センターで行う。

 米メディア(CNET News.com)によると,IBMとTDKは4年以内に65nmプロセス・ルールで新型MRAMの試作品を開発する計画という。

 別の米メディア(InfoWorld)によると,かつてIBMはMRAM分野でドイツのInfineon Technologiesと提携していたという(関連記事:米IBMと独インフィニオンが不揮発性メモリMRAMで提携,2004年にも製品化)。また同メディアは,米Freescale Semiconductorが2006年7月に記憶容量4MビットのMRAMを製品化したと報じている(関連記事:Freescale,業界初のMRAMチップ量産出荷---4Mビットで25ドル)。

[発表資料(IBM]
[発表資料(TDK)]