米IBMと独Infineon Technologiesが米国時間12月7日に,不揮発性メモリのMRAM(Magnetic Random Access Memory)を共同開発することを明らかにした。

 「ポータブル機器の電池動作時間を飛躍的に延ばし,電源を入れればすぐに立ち上がる『インスタント・オン』のコンピュータを実現する」(両社)。MRAMは,データを記憶するのに磁気を使うメモリ素子である(既存の多くのメモリ素子は電子の力を借りる)。IBMのMRAM

 両社はDRAM技術の共同開発などで10年以上提携関係にある。今回のMRAM共同開発は,この提携関係を拡大するものとなる。

 「Infineon社との提携は,MRAMの実用化に向けた大きな一歩となる。開発のスピードを高める」(IBM社Microelectronics部門担当副社長のBijan Davari氏)。製品出荷は2004年を見込む。

 MRAMは大容量で,書き換えや読み出しが高速である。また低消費電力という特徴を備える。電源を切ってもデータを保持する,いわゆる不揮発性のメモリなので,主記憶にハード・ディスク装置からデータをロードする必要がなくなり,パソコンなどにおける「ブート」時間の大幅な短縮が図れる。

 IBM Researchは1974年に,MRAMの基本構造「Magnetic Tunnel Junction」を開発した。この技術を用いて1998年には,実際に動作するメモリ素子を作り上げた。また2000年2月に行われたLSI回路技術に関する国際会議「ISSCC」で1KビットのMRAMを初披露している。

 今回の共同開発では,IBMのMRAM技術とInfineon社の大容量メモリ技術のノウハウを持ち寄る。両社から合わせて80人のエンジニアおよび研究者が,IBM社のThomas J. Watson Research Center(NY)やAlmaden Reseach Center(サンノゼ)などで開発にあたる。MRAM製品の登場は2004年を予定している。

[IBM社の発表資料]
[Infineon社の発表資料]