写真 「IP化時代の通信端末に関する研究会(第4回)」の様子
写真 「IP化時代の通信端末に関する研究会(第4回)」の様子
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 総務省は3月12日,「IP化時代の通信端末に関する研究会」の第4回会合を開催した(写真)。この研究会では,2010年ころをターゲットに将来の通信端末のイメージや要求される機能,課題などを検討している(第1回の記事第2回の記事第3回の記事)。今回は,トヨタIT開発センターの近藤弘志氏と,メディアコンサルタントでビー・ナチュラル代表取締役の林俊樹氏が意見を発表した。

 トヨタIT開発センターの近藤氏は,ITS(高度道路交通システム)や安全確保のための自動車同士の通信などで自動車が通信機能を取り込んでいく方向にあると説明。将来的な課題として,(1)安全性・信頼性の確保,(2)通信品質の確保,(3)使いやすいヒューマン・マシン・インタフェースの確保,(4)自動車と通信機能の寿命期間の整合,が必要とした。

 一方,メディアコンサルタントの林氏は,2012年,2017年に通信端末がどのような姿になるのかを予想した資料を提示。将来的には,高速・多機能な「インテリジェント・ネットワーク」と様々な通信端末の組み合わせが主流になるとの見解を示した。そうした環境での課題として,民間企業が個人情報を握りすぎるようになる点を挙げた。そのため,将来は認証のあり方が鍵になるとした。

 その後,両者に対する質疑応答などで議論を深めた。例えば自動車に通信機能を取り込むには安全性が重要になるが,「端末,ネットワーク,サービスを同一事業者が提供する垂直統合型のビジネスモデルでないと,安全性は確保できないのではないか」(座長代理の平野晋・中央大学教授)という指摘もあった。それに対し近藤氏は,「事業者間で一定のセキュリティを保つポリシーを設定すれば,インターネットのようなオープンな水平分業モデルでも安全性の確保は可能」とした。

 実際にビジネスとして成立させるには,ユーザーと事業者の間や事業者間での責任分解点が問題になる。しかし,責任分解点の議論については「総務省が扱える範囲を超えたり,法的に議論されていない部分にも踏み込むことにならないか」(東芝の土井美和子構成員)という指摘もあり,今後議論を進めるうえでの課題になった。

 今後は,2010年と2015年の通信端末のイメージを構成員に提出してもらい,それをベースに議論を深める。通信端末の進化についてその方向性を議論し,最終的には政府,通信事業者,ベンダーの役割がどう変わるかを報告書に盛り込む予定だ。座長の相田仁・東京大学教授は,「少なくとも2010年の方向性については,両論併記にはしたくない」と一定の結論を出す方針を示した。