総務省は1月26日,IP化の進展に対応した通信端末の在り方を議論する「IP化時代の通信端末に関する研究会」の第2回会合を開催した。同研究会では,2010年ころのネットワークを見据え,通信端末のイメージや必要な機能,課題とその対策などを検討している。

 第2回は前回(関連記事)に引き続き,今後議論すべきテーマや視点,課題などについて,KDDI,インターネット総合研究所(IRI),東芝,ラックの4社が意見を発表した。議論に上ったテーマは,(1)セキュリティ,(2)端末とネットの連携,(3)責任分解点など。

 (1)のセキュリティでは,端末の接続性や利便性が向上すると,より危険性が高まるという意見が出た。例えば様々な通信手段でどこでもネットに接続できることは,常に攻撃を受ける可能性があることを意味する。また,端末に多くの情報が搭載されるようになると,端末の紛失や盗難,外部からの攻撃は,より深刻な個人情報漏えいにつながる恐れがある。こうした懸念から,KDDI技術統轄本部技術開発本部長の渡辺文夫理事は,「接続性や利便性とセキュリティをバランス良く両立させることが重要になる」と主張した。

 ほかに目立ったのが,対策の底上げを訴える意見。「セキュリティ対策は現状,自己責任の感が強い。だが,情報家電など多様なユーザーが利用することを考えると,誰でも安心して使える仕組みが必要になる。コストをかけてでも(端末やネットワーク側で)セキュリティを確保すべき」(中央大学総合政策学部の平野晋教授),「攻撃の有無をユーザーに通知する仕組みを持たせるなど,危険性の“見える化”が重要」(ラックの村上晃シニアコンサルタント)などだ。

 (2)の端末とネットの連携は,端末やネットワークなどが連携して特定機能を提供することが必要とする意見である。例えばセキュリティ面では,単一の対策機能だけであらゆる攻撃を防ぐのは不可能。ラックの村上シニアコンサルタントは,「対策機器や端末,ネットワークなどが相互に連携できる仕組みが重要になる」と発言。例として,端末が自律的にセキュリティ機能を追加する仕組みや,ユーザーが端末上でセキュリティ・サービスを選択できる仕組みを挙げた。

 議論は責任分解点にも及んだ。端末の接続性や信頼性,安全性について誰が責任を持つべきかである。ただ,インターネットのようなオープンなネットワークでは,サービスや機能の提供者には接続性や信頼性などを保証できず,責任分解点を設けることも難しい。このため,通信事業者に閉じたネットワークの場合と,インターネットを介する場合とを区別して考えるべきだとする意見が出た程度で議論は終わった。