7月16日,カンファレンス「Enterprise Linux 2006」が開催された。今年のテーマは「システム統合,仮想化で実現する新時代の基幹システム」。Linuxおよび仮想マシン・ソフトウエアによるシステム構築に関する報告が行われた。


Enterprise Linux 2006の会場
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 基調講演では住友電工情報システム 代表取締役社長 岩佐洋司氏と住友電気工業 情報システム部 システム技術グループ グループ長 中村伸裕氏は「住友電工の新たな挑戦 64ビット化と仮想化で 基幹系Linuxサーバーの統合に取り組む」と題して講演。住友電工では三百数十台のLinuxサーバーを基幹システムとして利用しており,オープンソース・ソフトウエア活用の成功のポイントや,来月にも実システムへの適用を予定している(詳細記事)。


住友電工情報システム 代表取締役社長 岩佐 洋司氏
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住友電気工業 情報システム部 システム技術グループ グループ長 中村 伸裕氏
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 日本OSS推進フォーラム サーバー部会部会長の吉田正敏氏は「仮想化技術の最新動向 実運用でのメリットと課題」と題して講演。「メインフレームが20~30年かけて実現した仮想マシン機能を,オープン系サーバーは7~8年で急速にキャッチアップしようとしている。Xenの課題は保守性であり,ダンプ機能などの整備が必要」と話した。


日本OSS推進フォーラム サーバー部会部会長の吉田正敏氏
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 ガートナー ジャパン エンタープライズ・インフラストラクチャ担当 バイス プレジデント 亦賀 忠明氏は「サーバー統合の最新動向 大規模Linuxサーバーの導入の決め手」と題して講演。「サーバーOSの中でLinuxは最も急速に成長している。2010年にかけて,オープン系の水平分業に変わり,垂直統合された新しいシステム・インフラの考え方が登場しつつある。それに備えなければならない」と語った。


ガートナー ジャパン エンタープライズ・インフラストラクチャ担当 バイス プレジデント 亦賀 忠明氏
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 富士通 サーバシステム事業本部 Linuxソフトウェア開発統括 統括部長代理 中村敬氏は「基幹Linuxへの取り組み」と題して講演。「分散データの統合はTCO削減だけでなく日本版SOX法や個人情報保護法対策としても有効」と指摘した。また「2005年4月から1年の間に,富士通からLinuxカーネルに取り込まれたパッチの数は,日本のベンダーの中で最も多い」とLinuxへの注力を強調した。


富士通 サーバシステム事業本部 Linuxソフトウェア開発統括 統括部長代理 中村敬氏
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 日本IBM アドバンスド・テクニカル・サポート ICPシニア・コンサルティングITスペシャリスト 榊幹雄氏は「ビジネスの競争力を高める新基幹システムへの道 ~オープン・SOA・現行システムの融合~」と題して講演。「IBMのメインフレームzSeries上でLinuxを使用しサーバー統合を実現する顧客が増えている」として,東京三菱UFJ(関連記事)やNTTデータなどの事例を紹介した。


日本IBM アドバンスド・テクニカル・サポート ICPシニア・コンサルティングITスペシャリスト 榊幹雄氏
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 日本ヒューレット・パッカード マーケティング統括本部 担当部長 小桧山淳一氏は「サーバを1/6に減らせますか?:平均的なデータセンタでのサーバ使用率は15%」と題して講演。「仮想化によってリソースの利用効率を高めることが可能だが,運用コストを削減するためには管理の自動化が重要になる」と指摘した。


日本ヒューレット・パッカード マーケティング統括本部 担当部長 小桧山淳一氏
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 日立製作所 エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 Vプロジェクト プロジェクトサブリーダ 上野仁氏は「日立のLinuxと仮想化への取り組み」と題して講演。「サーバーの仮想化も,エンタープライズ領域での利用拡大に伴い,より高性能,高信頼で高度な運用管理が可能なものへのニーズが増大している」と語った。


日立製作所 エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 Vプロジェクト プロジェクトサブリーダ 上野仁氏
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 パネル・ディスカッションでは 住友電工 中村伸裕氏,日本OSS推進フォーラム 吉田正敏氏,富士通 中村敬氏が「仮想化やシステム統合を活かした システム構築のポイント」とのテーマで意見を交わした。「オープンソース・ソフトウエアのメリットを享受するためには,検証済みの実績ある組み合わせを“勝ちパターン”として横展開していくことが重要」モデレータ 日経Linux田島篤 編集長)といった意見がパネラーの共通認識として示された。


パネル・ディスカッション
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