NECは11月4日,ボーダフォンと共同で実施していた高速データ通信規格「HSDPA(high speed downlink packet access)」のフィールド・トライアルが成功し,HSDPAの商用システムの出荷準備が整ったと発表した。

 NECは2005年夏ごろから,ボーダフォンの第3世代携帯電話(3G)試験ネットワークを使ったHSDPAシステムのフィールド・トライアルを実施。HSDPA対応の商用3G基地局(Node-B)や無線ネットワーク制御装置(RNC),携帯電話端末を使って高速インターネット・アクセスやデータ通信などの動作を確認した。このトライアルで,移動中も中断せずに通信を継続できる機能など,HSDPAの商用サービスに必要な機能が稼働することを確認できたとしている。

 具体的な出荷時期などに関しては,「今秋から出荷していく予定だが,納入先などは現時点で未定」(NEC広報)。今後,欧州やアジアなど海外でもHSDPAの商用システムのトライアルを順次実施していく予定だという。

 また同日,日本エリクソンはボーダフォンの商用ネットワークをHSDPAに対応させるアップグレードに成功したと発表した。東京中心部のネットワークが対象で,10月23日に現行基地局のハードウエアおよびソフトウエアをアップグレードする作業が完了したという。商用化に向け,実ネットワーク上での試験に利用する。最大通信速度は下り3.6Mビット/秒,上り384kビット/秒。同社は2004年9月からボーダフォンと共同でHSDPAの実用化に向けた実験を進めていたが,商用ネットワークのHSDPA対応を発表したのは初めて。

 HSDPAとは,3G規格の一つであるW-CDMA(wideband CDMA)をベースに通信速度を高速化する拡張規格。規格上は下り最大14.4Mビット/秒まで対応できる。ボーダフォンは「できるだけ早期に対応する」(広報)としているものの,具体的な対応時期は明言していない。一方,NTTドコモは「2006年度の早い時期に対応する」ことを表明している(関連記事)。

(白井 良,中村 良輝=日経コミュニケーション