消費者に広告であることを認識させずに実施する宣伝行為とその手法。口コミサイトに好意的な情報を代行登録する業者の存在が明らかになり、議論を呼んでいる。


 インターネットで検索して口コミ評価を確認する行動が消費者の間で一般的になるなか、それを悪用する動きも目立ってきました。あたかも口コミ情報のような体裁を取り、広告であることを隠して商品やサービスを宣伝する行為です。これをステルスマーケティング、略してステマと呼びます。

 ステマ自体は以前から存在しますが、最近になって注目を集めたのは飲食店情報の口コミサイト「食べログ」でステマを代行する不正業者の存在が明らかになったためです。サイトを運営するカカクコムは、2011年12月までに39の業者を確認したと公表しました。さらに2012年3月1日には、不正な書き込みをしにくくする施策として、携帯電話番号を使った利用者認証システムを導入しました。

 食べログの一件のように、悪質な業者が関与するステマは論外です。ただ一般企業にとっても、他人事ではありません。ネット販促策の手違いなどで、消費者からステマと疑われてしまうケースは実際に起こります。

注意:気づかぬうちにしていることも

 例えば、ブログの書き手に試供品を渡し、書き手が気に入った場合に体験談を執筆してもらう販促策があります。こうした時に、書き手が試供品を受け取ったことを書き漏らして紹介すると、ステマによる記事と同じように見えます。こうした記事が複数見つかると、一部のネット利用者が問題視して“炎上”し、誤解による悪評を広めてしまいます。これでは逆に企業のブランド価値を損失しかねません。

 取引先を通じてステマに“荷担”させられてしまうケースもあります。例えば、空港内飲食店の運営などを手掛けるJALUX(東京都品川区)では、店舗運営の委託先が外部業者にやらせの投稿を依頼していたことが2012年1月に発覚しました。

 やらせの依頼は極端だとしても、親しい取引先の商品を応援したいという好意から、個人ブログなどで紹介するといったケースは十分に考えられます。その時に取引先との関係性を明示しておかないと、ステマに見えてしまう可能性があるわけです。

動向:消費者庁が調査

 現状ではステマを取り締まる法律はありません。ただ、消費者庁は問題を認識して調査を進めています。

 2011年10月には「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を公表。実際よりも著しく優良であるなどと消費者が誤認する内容の記載がある口コミは、景品表示法の不当表示に該当するとしました。2012年2月8日には、福嶋浩彦消費者庁長官が口コミサイトの投稿を継続的に調査していることを明言し、牽制しています。

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