個人を特定する生体認証技術の1つ。目や鼻の形、位置、顔の輪郭などから本人かどうかを識別する。認識精度が高まり、業務システムにも組み込まれ出した。


 2012年10月に開催された電機・ITの国際見本市「CEATEC JAPAN 2012」で、トヨタ自動車は顔認証技術を個人の特定に使った一人乗り電気自動車「Smart INSECT」を展示しました。Smart INSECTに象徴されるように顔認証技術は防犯カメラといった監視分野だけでなく、車など我々の生活にも深く入り込みつつあります。

 最近では企業の業務システムに顔認証技術を組み込む事例も出始めました。採用したのは高いセキュリティーレベルを求められる金融機関です。三井住友信託銀行は2012年1月、営業担当者が外出先で顧客データなどを閲覧できる外訪支援システムを稼働させました。その本人確認に顔認証技術を使っています。三井住友信託の営業担当者が持つスマートフォンが自身の顔を認識し、あらかじめ登録した情報とつき合わせてユーザーを特定する仕組みです。

効果:入退室だけでなくCS向上にも寄与

 このように顔認証技術が改めて注目を集める背景には、認識精度の向上があります。これまで生体認証技術としては指紋や手の静脈が一般的で、これらに比べると顔認証は認識精度が低く、普及の妨げになっていました。しかし近年、顔が正面を向いていなかったり、撮影時から時間がたっていたりしても高い精度で個人を特定できるようになりつつあり、導入に拍車がかかっています。

 業務システムへのログインといった用途以外にも、顔認証技術は入退室や出入国管理などでも力を発揮します。小売業やサービス業であれば、顔認証技術で得意客の来店を確認し、先回りしてぬかりのない接客に生かすこともできます。セキュリティー強化だけでなく、CS(顧客満足度)の向上にも貢献できる可能性を秘めているわけです。

 最近ではマーケティングデータの収集に顔認証技術を使うケースまであります。自動販売機にセンサーを取り付け、自販機の前に立った顧客の性別や年代といった情報を収集するのです。これらの情報から顧客の購買動機を先読みし、季節や時間帯に応じた商品のお薦めや開発に生かします。

事例:震災復興の写真のプロジェクトでも活躍

 リコーは2012年8月、東日本大震災の被災地で収集した写真をデジタルデータで保存し、被災者に提供するプロジェクトに、NECの顔認証技術を採用したと発表しました。システムで自動的に対象を限定できるようになり、被災者は家族や親戚らの写真を見つけやすくなるというわけです。これまでは、膨大な枚数の写真を地域やキーワードで絞り込み、手作業で写真を探していました。

押さえておきたいITproの関連記事