写真●国際自動車通信技術展で講演するトヨタ自動車の友山茂樹常務役員。走って会場に登場したのが、Smart INSECT
写真●国際自動車通信技術展で講演するトヨタ自動車の友山茂樹常務役員。走って会場に登場したのが、Smart INSECT
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 2013年3月13~15日に都内で開かれている「第4回 国際自動車通信技術展」で、トヨタ自動車のCIO(最高情報責任者)に相当する友山茂樹常務役員が講演し、「走るクラウド情報端末」を会場で披露した(写真)。

 友山常務は以前から「車は今後、顧客や社会との接点になる」と訴えてきたが、その象徴となるコンセプトカー「Smart INSECT(スマートインセクト)」を、初めて実際に「走る」状態で外部に公開した。

 Smart INSECTは、友山常務が講演の冒頭で提示した4つの「つながる」を具体化したものだ。4つとは、「人」「家」「車と車」「社会」を指す。それらのつながりを支えるインフラにクラウドを位置付け、「車とクラウドは表裏一体の関係になる」と説明した。

 Smart INSECTを走るクラウド情報端末と呼ぶのは、ドライバーとクラウド上の「バーチャルエージェント」が音声認識で常につながり、ドライバーが運転しながら音声で様々な操作をできるようにしているからだ。そして文字通りの「鍵」になるのが、スマートフォンである。

 走るクラウド情報端末は、まさにITがてんこ盛り。例えば、ドライバーの本人確認は顔認証システムで行い、スマホを車にセットすると、音声で「いつもの音楽をかけて」と指示を出せる。車自身がドライバーの眼の動きをとらえ、わき見運転を注意するといったことまでしてくれる。

 家のエアコンを切り忘れたと気づけば、自宅にエアコンのスイッチを切るように指令を出すことまでできる。人や家とのつながりは、こんな具合だ。

 車同士のつながりは、車間通信による衝突防止の安全走行支援が考えられるし、今後は車を“飛び石”のようにたどっていって通信する「アドホック通信」の研究も進めていることを説明した。これには「ホワイトスペース」と呼ばれる、普段あまり使われていない周波数帯域を使った通信を現実のものとし、「車が通信キャリアの一部になる可能性がある」として、その研究を進めていると明かした。

 また、車の走行データを蓄積していくと、ドライバーの行動を先読みし、エンジンをかけた途端にその日の渋滞情報や迂回ルートを示すことまでやっていきたいという。実はエンジンをかけた地点と切った地点の時刻と場所を記録して蓄積していくと、その人の毎日の行動パターンをほぼ予測でき、目的地とルートを提示できてしまうのだ。友山常務は自分の妻の実際の行動履歴を使った例を紹介して、会場を沸かせた。トヨタのビッグデータ活用の一端が垣間見られた。