アーバンリサーチ渋谷店に設置された「スタイルノート」のタッチ端末。フェリカ(FeliCa)規格のICリーダー・ライターを採用し「おサイフケータイ」から利用できる
アーバンリサーチ渋谷店に設置された「スタイルノート」のタッチ端末。フェリカ(FeliCa)規格のICリーダー・ライターを採用し「おサイフケータイ」から利用できる
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 アパレル小売店を展開するアーバンリサーチ(大阪市)は2008年11月下旬、顧客の携帯電話に店頭で新商品情報や電子クーポンなどのコンテンツを配信するシステムを刷新した。

 旧システムは、顧客の携帯電話でバーコードを表示してもらい、店頭のパソコンで読み取って顧客を識別する仕組みだった。だが「入会時の操作が煩雑で、店舗スタッフが入会を勧めにくかった」(広報・マーケティングマネージャーの齋藤悟氏)。入会時に携帯電話にバーコード画面を表示してもらったり、携帯メール送受信のために「ドメイン指定」を解除してもらったりする手間を要した。また、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)のデータベース分析に生かそうと個人情報を収集していたが、その入力や管理作業の負担も大きく、結局は生かし切れていなかった。

 今回導入した新システム「スタイルノート」では個人情報の収集を見送る代わりに、会員登録作業の負荷をなくし、来店客の利便性を向上させた。店頭のICリーダー・ライターに来店客が携帯電話をタッチするだけで、新商品情報や電子クーポンなどのコンテンツが自動的にダウンロードされる。事前登録は不要で、詳細な個人情報は取得していない。まず新入荷情報やイベント情報などから配信しており、徐々にセール情報や電子クーポン配信などにコンテンツを拡大する。電子クーポンを携帯電話間の赤外線通信で共有してもらい、来店客相互の“口コミ”を広げる効果も期待している。

 新システムのインフラにはアパレルウェブ(東京・中央区)が同年11月から運用開始したASPサービスを採用した(関連記事)。対応する携帯電話はフェリカ(=FeliCa ICチップ)を内蔵した「おサイフケータイ」に限られるが、日本国内での普及率は7~8割に達するうえに、同社の中心顧客層は20代前半の若年層と若いこともあって、ほぼすべての顧客をカバーできると考えて今回の採用に至った。

 ICリーダー・ライターのコストが1台2万~3万円以内まで下落が進んでいることも、導入の追い風になった。東京都内や関西圏を中心に出店する「URBAN RESEARCH」「KBF」の2ブランド計29店舗で、各店舗のレジ脇に2台ずつICリーダー・ライターを設置している。各店舗で1日50~60人、来店客のおおむね半数程度が利用しているという。

 おサイフケータイで電子クーポンなどを配布するシステムは、2007年ごろから日本マクドナルド(かざすクーポン、関連記事)やサークルKサンクス(関連記事)など、大手チェーン店から導入が進んでいる。今後、同様のシステムを導入する中規模チェーン店が増えそうだ。