新ケータイクーポンでOne to Oneの次へ,場面に応じた提案が焦点

日本マクドナルドは「おサイフケータイ」の仕組みを使った新販促ツール「かざすクーポン」の展開を2008年5月に九州地区で開始。順次、全国に広げている。ケータイだけで商品の提案から注文、決済まで完結する次世代型マーケティングが可能になる。同社でネット/ケータイ展開を統括する前田取締役に戦略を聞いた。

かざすクーポンの展開状況、利用状況は。

 5月から九州でスタートして、東京23区でも7月に開始した。年内には関東圏をカバーして、一部大阪にも広げたい。2009年には全国展開を済ませたいと思っている。

 利用は、順調に広がっている。ケータイによる(メールでクーポンを配信して店員に見せて使う)「見せるクーポン」の会員が1000万人いる。そこからの会員の移行を順次図っている。かざすクーポンでは、ケータイでアプリを立ち上げると(過去の購入履歴などに応じて)お勧めのクーポンが先に表示され、注文の数を入力できる。それを店舗のリーダー/ライターにかざすことで、注文や支払いまで簡単に済ませることができる。

 ただその利用は、日常の生活シーンで「どこでもよく見る光景」とまで至っていないのが現状。これからは会員を増やす以上に、使う癖を付けていただきたいと考えている。おサイフケータイは代金支払いや切符の代わりには使われているが、(かざすクーポンのような)会員証として日常的に使うまでには至っていない。そこで、どうやってクリティカルマスを超えていくか、日常生活で使っていただくかが我々のチャレンジとなる。将来的に利用比率を、見せるクーポンと半々に持っていければいい。

そもそもの、かざすクーポンを始めた狙いは。

前田 信一(まえだ・しんいち)氏
撮影:山田 愼二

 我々の商品は、あらかじめカタログやWebサイトで比較検討して買いに行く商品ではない。昼、何を食べようかなと考え、昨日は何だったと考えて、マックに行くかとなる。どうしようかというときに、ぽんと背中を押せるかどうかで客数が決まる。たまたまクーポンを持っていた、今日から「月見バーガー」の販売が始まるといったところで思い出すかどうか。また、週末だと子供が「ハッピーセットを買いに行きたい」と言うかどうかで決まる。

 一人の行動の傾向を見て提案するのは、米アマゾンなども取り組んできた古典的なやり方だ。ただ、仕事の途中、週末、疲れて家へ帰るときなどによって、それぞれでマクドナルドに求める物が違う。シチュエーションに合わせたマーケティングをしていくのが究極の目的。その人のいる場所、時間帯に応じた訴求は紙媒体では間に合わないし、パソコンでも間に合わない。ケータイでコミュニケーションして、クーポンなどの利便性を手の中にあるケータイに落とし込んでいかないと意味がない。そこでケータイのアプリを核としたマーケティング活動を始めた。「One to One」の次のステップとして実現したい。

見せるクーポンでも、ある程度の目的は達成されるのでは。

 見せるクーポンの場合、(店員に見せるだけなので)その人の購買履歴を取ることができない。その人に合った提案をするためには、ケータイのアプリにしてそうしたデータを収集しなければならない。

 また、店に来て不満に思われるのが、待ち時間だと思う。これをもっと短くするには、食べるものが決まっている人には事前にオーダーして、リーダー/ライターにかざせば商品が受け取れるようなサービスなどいろいろな展開が考えられる。こうした事前オーダーの仕組みも2009年には実現したいと考えている。そこにも、アプリにしておく必要性がある。