「萌えるSE残酷物語」をコンセプトにした夏海公司氏のライトノベル「なれる!SE」は、新人エンジニアの桜坂工兵が、個性豊かな上司や顧客に囲まれて成長する物語だ。

 同作では、プロジェクトの修羅場でSEがバタバタと倒れる様など、IT業界の暗部がリアルに描写されていることでも話題になった。このライトノベルを通じてIT技術者にどのようなメッセージを伝えたかったのか、IT業界が抱える問題点は何か、などを作者の夏海氏に聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ


夏海さんのIT業界における経歴を教えて下さい。

「なれる!SE」作者の夏海公司氏(顔出しNGなので後ろ姿)
「なれる!SE」作者の夏海公司氏(顔出しNGなので後ろ姿)

 IT業界にいたのは10年ほどです。最初は金融系のSIer(システムインテグレータ)に就職しました。ある金融機関のメインフレーム保守担当として、COBOLのプログラムを書いていました。

 ただ、その顧客企業に特有の業務にばかり詳しくなってしまい、「技術者としてつぶしがきかなくなる」と感じたため、2~3年後に第2新卒でベンチャー企業に転職したんです。

 その後は、外資系IT企業などいくつかの企業を転々としました。その間に、UNIXやLinuxなどのITインフラ、データベース、ネットワーク、アプリケーション開発など広範に体験させてもらいまいた。その後、いつのまにかラノベ作家になっていました。

いやいやいや、いつのまにかということはないでしょう。どのようなきっかけで作家に転向したんでしょうか。

 実は、勤めていた外資系企業が、円高などの環境変化で受注が減り、社内で仕事がなくなってしまいまして……。時間が空いたので、好きだった文章でも書いて応募してみようかな、と。